• スポーツ・健康
  • クレアチンは筋トレをする人だけのもの?―― 筋肉・脳・健康をめぐる最新研究の読み方

    「クレアチンは筋トレをする人のサプリメント」――そう思っていませんか。最近は「運動をしなくても筋肉が増えた」「脳や気分にも良いらしい」といった話題がSNSで広がり、中高年や運動習慣のない人からも注目を集めています。この記事では、NSCAの専門誌と最新の研究をもとに、わかっていること・まだ期待の段階にあることを整理し、上手な付き合い方を紹介します。

    話題の研究 ―― 「運動なしでも筋肉が増えた」は本当か

    きっかけの一つは、2026年8月に国際スポーツ栄養学会誌に掲載された、米国テキサスA&M大学の研究です。運動習慣のない45〜65歳の健康な成人64名が、クレアチン(1日10g)またはプラセボ(偽薬)を12週間摂取しました。その結果、運動プログラムに参加しなかった人でも、クレアチンを摂ったグループは除脂肪組織量(体重から脂肪を除いた量)が約1.1kg増え、ベンチプレスとレッグプレスの最大挙上重量も向上しました。プラセボのグループでは、除脂肪組織量は0.16kg減っていました(図1)。

    運動と食事のプログラムに取り組んだ人では、クレアチンを加えることで筋力の伸びがさらに大きくなりました。一方、認知機能については、記憶や反応時間の一部の検査で良い変化が見られたものの、差が出なかった検査も多く、結果は一様ではありません。
    興味深い結果ですが、読み解くうえで押さえておきたい点が3つあります。

    ・「除脂肪組織量」は筋肉そのものではありません。測定値には体内の水分も含まれ、クレアチンは筋肉内の水分を増やすことが知られているため、増えた分のすべてが新しい筋肉とは言い切れません。

    ・1日10gは、一般的な目安(1日3〜5g)より多い量です。少ない量でも同じ結果になるとは限りません。

    ・運動をするかどうかは参加者自身が選んでおり、人数は64名、期間は12週間です。より大規模で長期の研究による確認が待たれます。

    つまり、この研究が示しているのは「運動は要らない」ということではなく、「運動習慣のない中高年でもクレアチンが役立つ可能性があり、運動と組み合わせればさらに良い」ということだと言えます。

    そもそもクレアチンとは ―― 体に備わった「予備バッテリー」

    クレアチンは、体内でアミノ酸(グリシン・アルギニン・メチオニン)から作られる物質で、特別な人工成分ではありません。ただし体内で作られるのは1日に必要な量の約半分(1〜2g)で、残りは肉や魚などの食事から補っています。体内のクレアチンの約95%は筋肉に蓄えられ、少量が脳などにも存在します(図2)。

    筋肉や脳が働くときのエネルギー源は、ATP(アデノシン三リン酸)という物質です。クレアチンは、使われたATPをすばやく作り直すのを助ける、いわば「予備バッテリー」の役割を担っています。全力で走る、重いものを持ち上げるといった、短時間の強い運動で特に力を発揮します。

    食事だけで貯蔵量を上限近くまで高めるのは簡単ではありません。クレアチン約2.5gを摂るには、牛肉やサーモンを1日に約450g食べる必要があるためです。サプリメントで1日3〜5gを摂ると、筋肉内のクレアチンは20〜40%増えるとされています。肉や魚をあまり食べない人は、もともとの貯蔵量が少ない可能性があります。

    筋肉への効果 ―― 30年以上の研究が支える「定番」

    クレアチンは1990年代初頭から研究が続けられており、数あるサプリメントの中でも効果と安全性の裏づけが特に豊富です。筋力トレーニングと組み合わせることで、筋力や筋肉量の向上、強度の高い運動を繰り返す能力の向上が、多くの研究で確認されています。

    その効果はアスリートだけのものではありません。米国の消防士28名を対象にした研究では、タンパク質と糖質の補給にクレアチン(1日5g)を3週間加えたところ、要救助者に見立てた人形の搬送など、実際の業務を模した課題のタイムが短縮しました(Elstad et al. 2023)。
    一方で、効果が確認されなかった研究もあり、「飲めば誰でも必ず効く」というものではないことも知っておきましょう。

    脳・気分への効果 ―― 期待は大きいが、まだ研究の途上

    脳は、体が使うエネルギーの約20%を消費する「大食い」の臓器です。クレアチンを補給すると脳内のクレアチンも増えることがわかっていますが、その増え方は多くの研究で3〜10%程度と、筋肉に比べて小さく、ゆっくりです。

    認知機能については、短期記憶などで「控えめな改善」を報告する研究が多く、特に効果が出やすいのは、睡眠不足や精神的な疲労など、脳に負荷がかかっている場面だと考えられています。
    例えば、睡眠不足のラグビー選手で、クレアチンの摂取がパスの正確さの低下を和らげたという報告があります(Cook et al. 2011)。菜食の人や高齢者でも、記憶力に良い変化が報告されています。

    ただし、健康な成人を対象にした比較的大きな研究では、改善はあっても小さいと報告されています(Sandkühler et al. 2023)。気分やメンタルヘルス、脳振盪からの回復などへの活用も研究されていますが、現時点では「可能性が示されている段階」です。長期的に摂り続けたときの脳への影響も、今後の研究課題とされています(図3)。

    何を・どれくらい・いつ摂るか

    クレアチンを試してみたい場合の目安は、次のとおりです。

    項目目安補足
    種類クレアチンモノハイドレート最も研究が多く、効果・安全性・価格のバランスに優れる
    量1日3〜5g毎日続けることが大切。最初に多めに摂る「ローディング」(1日約20gを5〜7日間)は必須ではない
    タイミング運動する日は運動の前後運動の前と後で明確な差は確認されていない。続けやすい時間でよい
    組み合わせ糖質やタンパク質を含む食事と一緒に筋肉への取り込みが高まる可能性がある

    ※ 参考文献1・2をもとに作成。

    話題の研究で使われた1日10gは研究上の設定です。まずは一般的な目安である3〜5gから考えるのが現実的です。
    クレアチンは健康な成人での安全性がよく研究されている成分ですが、持病のある方や薬を服用している方は、始める前に医師や管理栄養士に相談してください。また、競技に取り組む方は、アンチ・ドーピングの観点から第三者認証を受けた製品を選ぶと安心です。
    そして何より、土台になるのは運動と食事です。クレアチンは運動の「代わり」ではなく、運動の効果を後押しする「助っ人」として考えましょう。

    まとめ

    クレアチンは、筋力・筋肉量への効果が長年の研究で確かめられている、信頼性の高いサプリメントです。近年は中高年の健康維持や脳機能への応用にも研究が広がっていますが、こちらはまだ期待の段階のものも少なくありません。話題の数字だけに飛びつかず、まずは週2〜3回の筋力トレーニングと、肉・魚を含むバランスの良い食事から。そのうえで、必要に応じて1日3〜5gのクレアチンを取り入れてみてください。

    参考文献

    1. Gonzalez A, Escalante G. The importance of creatine timing for muscle size and strength. Personal Training Quarterly, 10(2): 18-20. 2023.
    2. Leon S, Gonzalez D. Nutrition research column – Does creatine monohydrate help optimize occupational performance outcomes? TSAC Report, Issue 76: 26-29. 2025.
    3. Booker D. Creatine and cognitive function. NSCA Coach, 12(2): 14-17. 2025.
    4. Effects of creatine supplementation with and without exercise and diet intervention on body composition, cognitive function, and markers of health in middle-aged and older adults. J Int Soc Sports Nutr. 2026. doi: 10.1080/15502783.2026.2716273(テキサスA&M大学 Exercise & Sport Nutrition Lab。著者名・巻号は原著で確認の上、追記してください)
    5. Kreider RB, Kalman DS, Antonio J, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. J Int Soc Sports Nutr, 14: 18. 2017.
    6. Elstad K, et al. The effects of protein and carbohydrate supplementation, with and without creatine, on occupational performance in firefighters. Nutrients, 15(24): 5134. 2023.(文献2で紹介)
    7. Cook CJ, et al. Skill execution and sleep deprivation: effects of acute caffeine or creatine supplementation – a randomized placebo-controlled trial. J Int Soc Sports Nutr, 8: 2. 2011.(文献3で紹介)
    8. Sandkühler JF, et al. The effects of creatine supplementation on cognitive performance – a randomised controlled study. BMC Med, 21: 440. 2023.(文献3で紹介)

    こちらの記事もチェック

    関連の記事

    • スポーツ・健康

    熱中症とトレーニング

    車いすテニスをしている様子
    • スポーツ・健康

    車いすテニス選手に対するストレングス&コンディショニングのアプローチ

    • スポーツ・健康

    プロテインはどこまで必要? 摂取量・タイミング・新しい食材を総チェック

    トレーニング期間中のサプリメント摂取
    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    減量中のトレーニングにホエイプロテインは有効か? 

    • スポーツ・健康

    デッドリフトだけじゃない!ヘックスバーで鍛える筋力と競技力

    • スポーツ・健康

    試合前のトレーニングがパフォーマンスを向上させる

    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    レジスタンストレーニングによる柔軟性の向上

    • スポーツ・健康

    スノーボード選手のためのエビデンスに基づくトレーニング計画

    • スポーツ・健康

    ダウンヒルスキーを楽しむためのトレーニング・エクササイズ

    • スポーツ・健康

    けがをしたときの栄養

    音楽を聴きながらボールを使ったトレーニングをしている女性
    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    体幹スティフネスを高めるには?動的vsアイソメトリック

    • スポーツ・健康

    アスリートは風邪をひきやすい?

    アーカイブ