4月は年度明け、そして学校では新入生が入学するタイミングですね。学校の部活動等においても新入生を迎え入れることとなりますが、その際、在校生と新入生のトレーニング指導はどのように行なうのでしょうか?
在校生は前年までに培ってきたトレーニング経験がある一方で、新入生の能力は未知数な部分があります。多くの高校生アスリートは、非常に限定的、あるいは形式的ではないトレーニングしか経験していない場合も多々見受けられると思います。
今回紹介する記事は、大学1年生の女性アスリートにストレングス&コンディショニング(S&C)プログラムを導入するにあたって、留意すべきポイントについて、米国の大学S&Cコーチが私見を述べている記事です。
女性アスリートにみられる最も顕著な弱点は、大腿四頭筋と比較した際のハムストリングスの筋力不足です。そのため、大多数の新入生女性アスリートに対しては、スクワットやランジなどのエクササイズにおいて、バーベルやダンベルなどの負荷を利用するプログラムに進む前に、自重でしっかりと動作コントロールできることを習得させる必要があるとされています。
またグルートハムレイズやグッドモーニングを取り入れることで、ハムストリングスを強化し、スクワットなどのメインエクササイズを行なう準備に取り組むことが推奨されています。
またスプリントやジャンプといった下肢を用いた他のトレーニングにおいても、適切な技術を用いて減速する能力も弱点となるケースがみられます。この部分についても、まずは適切な技術を教え、その後本格的なスプリントやジャンプエクササイズに取り組むべきでしょう。
女性アスリートは男性アスリートと比べて、多くの場合上半身の筋力が弱いとされています。サッカーなどの下半身が主体となる競技では、上半身の筋力がおろそかにされがちです。したがって、新入生女性アスリートに対しては、上半身の筋力がパフォーマンスの総合的なアウトプットに対してもつ重要性と、それを身につけることによってフィールドパフォーマンスがいかに改善されるかを教えることが強調されています。
なお上半身のトレーニングの際には、下半身同様、動作コントロールの習得から始めて、徐々に負荷を用いていくことが推奨されています。
トレーニングエクササイズだけでなく、S&C、栄養、リカバリーなどの基本的な知識に関しても、大多数の新入生には指導が必要です。エクササイズのやり方だけでなく、なぜそのエクササイズを行なうのか、そこで行なわれる動作を実際のプレーに生かす方法を理解させることができれば、新入生は積極的にエクササイズに取り組むと考えられます。これは栄養やリカバリーについても同じことがいえるでしょう。
記事ではそのほかに、新入生全員に対してオリエンテーションプログラムを導入することを紹介しているコーチの私見も掲載されています。新入生用プログラムについては、競技のシーズンや新入生のトレーニング経験によって、その内容や期間も変わってくると思います。
ただいずれにせよ、在校生とは別に、まずは適切なテクニックの習得、傷害リスクの低減を目標にしていく必要があろうかと思います。また、いかにしてトレーニングなどの実際の競技以外の部分に興味をもたせるかも、トレーニング指導者の腕の見せ所ではないでしょうか。
新たなステージで競技に取り組もうと意気込んでいる新入生アスリートに対する指導に際し、この記事の内容が参考になれば幸いです。
NSCAジャパン2010年翻訳掲載分 Vol.17 No.2 p.42~44
原文 Strength & Conditioning Journal Vol29, No.6, 67-69