オリンピックが終盤戦を迎えたかと思えば、今度は夏の甲子園が開幕しましたね。
昨今の夏の甲子園では熱中症対策が課題となり、様々な取り組みがなされています。
その一つが、昨年始まったクーリングタイムの活用です。
クーリングタイムは、試合の中盤である5回が終了した際に、10分間の休息を設け、会場内に用意された冷房が効いた部屋で休み、提供されたスポーツドリンクやアイススラリーを飲むことで、身体冷却を行うというものです 。アイススラリーとは、シャーベット状に凍らせたドリンクのことで、冷たい飲料の摂取と比較して深部体温を下げることができます。詳しくは以下のリンクをご覧ください。
・日刊スポーツ2023年8月6日記事より
「【甲子園】今大会から5回終了時にクーリングタイムが導入」
そこで今回は、野球と類似したソフトボールの投手における暑熱環境下での熱中症対策に関する研究を紹介したいと思います。
・S&Cジャーナル2024年4月号より
「暑熱環境下のソフトボールにおける運動前およびイニング間のアイススラリー摂取がピッチングパフォーマンスに及ぼす影響」
この研究の目的は、イニング前およびイニング間のアイススラリー 摂取が、暑熱環境下での体温およびピッチングパフォーマンスに及ぼす影響を検討することでした。夏の屋外グラウンド(気温:30.8±2.7 ℃、相対湿度:57.0±7.9%)において、アマチュアソフトボール投手7名(男性4名、女性3名)が、7イニングで構成されるソフトボール模擬試合の投球を行ないました(1イニングの投球数:15球)。
そこで試合前とイニング間にアイススラリー(-1.2±0.1 ℃)を摂取した場合と、同じタイミングで冷えたスポーツ飲料(9.8±2.2 ℃)を摂取した場合での、体温およびピッチングパフォーマンスへの影響を調査しました。
結果、アイススラリー摂取はピッチングパフォーマンスには影響を及ぼしませんでしたが、直腸温の低下は、コントロール試行と比較し、アイススラリー試行で有意に大きく(p=0.021,d=0.68)、イニング前およびイニング間のアイススラリー摂取が、熱、心血管、知覚的負荷を軽減させることが明らかとなりました。このことからアイススラリーによる運動中の身体冷却は効果的な暑さ対策になると考えられます。
ただ昨年の甲子園においては、クーリングタイム後の6回に、下肢を攣る選手が続出したということがありました。これは過度の冷却に起因している可能性があるということで、主催者はクーリングタイム中でも軽運動をすることを推奨しています。実際には、身体冷却と6回以降に向けた軽運動(ウォームアップ)のバランスが重要となるかもしれません。
・S&Cジャーナル2024年4月号より
「暑熱環境下のソフトボールにおける運動前およびイニング間のアイススラリー摂取がピッチングパフォーマンスに及ぼす影響」
・日刊スポーツ2023年8月6日記事より
「【甲子園】今大会から5回終了時にクーリングタイムが導入」
・讀賣新聞オンライン(2023/08/18)より
「暑すぎる甲子園、各校の対策は…日焼け止めや腕時計型熱中症アラーム・朝夕2部制の提案も」