• スポーツ・健康
  • 運動会で速く走るには?まずは「腕」の役割について考える。

    新年度がスタートし、新たな部活動で競技生活を始めたり、春の運動会シーズンを迎えたりして、「今年こそ、速く走れるようになりたい!」と心ひそかに誓っている方もいるでしょう。

    そもそも、「走る」というのは、運動のさまざまな場面で必要な基本動作ですが、普段から正しい走り方を意識しているでしょうか? また、正しい走り方と聞くと、下半身の動きをイメージされることが多く、実際に世の中に出ている情報も脚部に関するものが多いのが現状ですが、今回は、正しい走り方にともなう「腕」の動きや役割についてご紹介します。

    「速く走る」ためには、
    腕と脚の効率的な連動が大切

    「速く走るためには、腕に振り方も大事」とよく言われます。ところがこのテーマについては、専門家の間で今もさまざまな議論が続いています。腕は脚の回転運動に対してバランスを取る役割しかないという意見がある一方で、腕はスプリント走においてとても重要な役割を果たしているという意見もあります。今日、下肢の筋力とスプリント走のパフォーマンスとの間には強い関連性があることは明らかになっています。ところが、ここで腕振りがどれだけ関与しているかについては研究が不足しており不明確です。

     ただ、「走る」動作には、「スタート・加速・最大速度」という特徴的な局面があり、それぞれの局面で身体の姿勢が変化するため、当然この変化に従って腕が担う役割も変化していると考えられます。つまり「速く走る」ためには、腕と脚の効率的な連動が必要なのです。

    また、地面を蹴り出す垂直推進力の10%は腕が担っているとされており、速く走るためには効果的な腕振りが重要だといえるでしょう。

    腕振りの目的は
    「推進力の増大」と「バランスの改善」

    では、具体的にスプリント走中の「腕」の役割について、大きく「スタート局面/加速局面」と「最大速度局面」に分けてご紹介しましょう。

    【スタート局面/加速局面】

    スプリント走のスタートでは、離地する時に身体の重心を前方に傾けることが水平加速を大きくしていますが、腕がこの姿勢に寄与しているとされます。また、腕振りによる水平方向への加速が、ストライドを伸ばすことにも役立っています。

    加速局面においても、腕振りによって進行方向への推進力を増大させることで、スピードアップにつながります。

    【最大速度局面】

    最大速度局面では身体は直立しており、腕振りが身体の重心の変化に直接関与することはありませんが、骨盤から始まる身体の回旋に対する反作用として働くことで、股関節に対してバランスを取る役割を果たしていることがわかっています。

    さらに重要なのは、腕が体幹に対して上方へ加速することで、身体を上方へ動かそうという働きが生まれ、ランニングスピードが増すことにつながることです。力強い後方への腕振りがストライドを大きくし、地面反力を高めることもわかっています。

    スプリント走の(A)スタート局面と(B)最大速度局面

    スタート時は肩関節からしっかり大きく
    最大速度の局面では爆発的に振る

    スプリント走において腕振りが大変重要な役割を果たすことはわかってきましたが、その最大の効果を得るためには、ただしい腕振りであることが重要です。正しい腕振りとはどういうものかをまとめました。

    【スタート局面/加速局面】

    ◎肩関節から大きく動かすことを意識し、腕はダイナミックに振る
    ◎爆発的に振る

    【最大速度局面】

    ◎爆発的に振る
    ◎前に振り出す時は、上腕が身体に対して垂直になるようにして、手が耳の高さに届くように振る。
    ◎腕を後方へ振る時は、上腕が身体に対し45度になるようにして、手がお尻のあたりに届くように振る

    トレーニングの目的を意識しながら
    ダイナミックの腕振りの習得を

    速く走るための、ダイナミックな腕振りを実現するトレーニングをご紹介します。

    【メディスンボール・ ファーストステップリリース】

    腕に負荷をかけるエクササイズ。初期段階で必要とされる腕のダイナミックな動作によって推進力を高めることに有効。(自宅などでは、軽めのボールやクッションなどで代用しても良い)

    【スタンディングトランジション・アームドライブ】

    スタートから最大速度局面まで身体姿勢が前傾から直立へと変化する時に、腕を振るタイミングを調節する必要があり、身体の立ち上がりのリズムを改善するために有効なトレーニング。

    【直立姿勢で行なうアームドリル】

    足を平らに地面につけて、足を底屈させるトレーニング。股関節から肩関節までの非対称性を確認することで、走行フォームの改善に有効。(右の写真は非対称性の例)

    スプリント走における腕の役割や効果的な腕振りについては、今後さらに研究が進む分野だろうと思われます。この記事で紹介したエクササイズも一例ですが、走る時にはぜひ、正しい腕振りも意識してください。

    参考文献

    NSCAジャパン機関誌 2020年1-2月号
    スプリント走動作中における腕のメカニクスの役割

    
                

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