
NSCAジャパン機関誌『Strength and Conditioning Journal Japan』2026年10月号を発刊しました。NSCAジャパン会員のみ読むことができる機関誌ですが、毎号数本はどなたでも読めるフリー記事をご用意しています。
●10月号のフリー記事
・ストレングスコーチ奮闘記 in セネガル
・パーキンソン病の管理のための運動戦略
今回はその中から、「パーキンソン病の管理のための運動戦略」の記事を一部抜粋してご紹介します。
パーキンソン病(PD)は、進行性かつ慢性の神経変性疾患である。アルツハイマー病に次いで、2番目に患者数の多い疾患であり、最終的には非運動機能と運動機能の両方が損なわれる。これらの影響は、生活の質を低下させ、時として早期死亡さえもたらす。過小診断されている疾患にもかかわらず、45歳以上のアメリカ人の成人のうち、毎年約90, 000人がPDと診断されている。
PD患者の運動症状と非運動症状における身体活動の好影響に関する研究は、研究者、医師、介護者、患者の間で増加している。2018 年に発表されたレビューでは、運動がPD患者の制限を管理し、日常生活動作を向上させる補助的治療となる可能性を示唆している。
有酸素性運動は、加齢や心血管系機能に対する一般的な効果に加え、気分や認知機能の評価指標も改善する。PD 患者において、トレッドミル歩行やステーショナリーバイクを用いた運動により、歩行ペースや歩行距離、歩行パラメータの改善も証明されている。
有酸素性運動について検討した文献によると、最もよく処方されるエクササイズ頻度は、週2回、各60分のセッションであったが、運動耐性が良好であれば、PD 患者は、可能な限り頻繁に有酸素性運動を行なうことが推奨される。
安全なエクササイズ参加を促進し、不必要な医療検査を減らすため、アメリカスポーツ医学会は、運動適性質問票により運動前の適性を判定するチャートを提供している。
まとめると、心血管系疾患、代謝疾患、腎疾患の症状を呈していないPD 患者は、医師の許可を得ずに適切な強度で運動を開始できる。
しかし、このような症状がみられるPD 患者は、運動プログラムを始める前に医師の許可を得ることが必要である。症状のあるPD患者においては、神経科医、理学療法士、または運動障害専門医が、PD の重症度を評価することが必須となる。
PD患者に中強度の有酸素性エクササイズを処方したある研究によると、ステーショナリーバイクを中強度(最大心拍数[HRmax]の60~75 %)で週3 回、1 時間ずつ、8 週間実施する介入が、血清中のBDNF 濃度を有意に上昇させ、炎症を軽減したと報告している。
有酸素性運動は、即時的および長期的に、BDNF 濃度に対して明確な影響を及ぼすことが認められており、このような即時的、長期的な変化は、高齢者の脳における、海馬依存性認知能力の向上と関連している。また、有酸素性運動の中でも、高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、BDNF濃度を著しく増加させるため、有酸素性運動のプロトコルを作成する際、エクササイズ専門職は、約1時間にわたる比較的長時間の中強度連続運動か、または約30 分程度の比較的短いHIIT セッションを取り入れることを検討すべきである。
PD の発症平均年齢は、およそ70 歳である。ただし、ごく一部の人々は若い年代で発症を経験し、50歳未満で症状が現れる。加齢はPD とは別に、ドーパミン作動性ニューロンの変性と関連しており、PD 発症における最大のリスク因子と考えられている。また、加齢は、骨格筋の筋量、筋力および機能の加速的な減少を特徴とするサルコペニアとも関連している。
サルコペニアは、加齢に伴いよくみられるが、PD 患者では、同年齢の対照群と比較して、より頻繁に発生する。したがって、骨格筋量、機能、および制御能力の低下に対処するために、漸進的レジスタンストレーニングが、パーキンソン病患者の筋力を改善する安全な非薬物療法として推奨される。
漸進的レジスタンストレーニングのプログラムは、通常、個人の1 RM(適切なフォームで1回だけ挙上できる最大重量)に基づいているが、PD 患者は、1 RM テストを実施する前に、少なくとも48~72 時間の間隔を空けて、2 回の習熟セッションを行なう必要がある。また、エクササイズはフリーウェイト種目ではなく、マシーン種目に重点を置くことが重要であり、1 RMプロトコルと挙上テクニックは、NSCAが提供するガイドラインに従うべきである。
多くの研究者が、補助的かつ代替的な取り組みとして、運動療法が、PD 患者における運動症状と非運動症状の両方を改善する効果を調査してきたが、様々な運動療法の様式が、これら症状に対して、良好な効果を示すことが確認されている。
有酸素性運動は、運動療法の中で最も広く研究されており、運動症状と非運動症状、バランス、歩行機能を有意に改善するが、最近のエビデンスでは、漸進的レジスタンストレーニングによる効果の追加が支持されている。
しかし、トレーニングのプログラムデザインは、個々の疾患の重症度、トレーニング目標、専門用具の利用可能性によっても影響を受けるため、エクササイズ専門職は安全性を最優先しつつ、個人の制限に応じてプログラムを調節していかなければならない。PD患者が、エクササイズ専門職を信頼できると感じれば、その助言に従う可能性が高まり、ひいては、高い継続性と長期的なトレーニング成果に繋がることになるだろう。
●フリー記事1:ストレングスコーチ奮闘記 in セネガル
●フリー記事2:パーキンソン病の管理のための運動戦略
その他、10月号には以下の記事を掲載しています。
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