
NSCAジャパン機関誌『Strength and Conditioning Journal Japan』2026年8-9月号を発刊しました。NSCAジャパン会員のみ読むことができる機関誌ですが、毎号数本はどなたでも読めるフリー記事をご用意しています。
●8-9月号のフリー記事・防衛大学校における幹部自衛官・タクティカルアスリートの育成に関する実践報告:日本版TSACモデルの構築に向けて
・カナダの大学女子7人制ラグビー選手の身体育成に関する包括的アプローチ
・コミットメントの醸成:アスリートと競技コーチによるストレングス&コンディショニングプログラムへの信頼を高める
今回はその中から、「カナダの大学女子7人制ラグビー選手の身体育成に関する包括的アプローチ」の記事を一部抜粋してご紹介します。
7 人制ラグビーは、資金とリソースの増加に伴い、多くの国において国際的にも国内的にも成長を遂げている。カナダにおける女子7人制ラグビーは、大学プログラムおよび一括で管理されたトレーニングプログラムの下で実施され、地域および国内レベルで人気のスポーツとなっている。
7人制ラグビーを成功に導くためには、ストレングス& コンディショニング(以下、「S&C」という)が重要であることから、本稿では、カナダの7 人制ラグビーについて、大学から国際レベルまでの選手育成に用いられる枠組みのいくつかに焦点を当てる。
カナダでのラグビーは、国内全体で成長し、競技人口を増やしているスポーツである。7人制ラグビーの女子代表チームは、ワールドラグビーセブンズシリーズ、ワールドカップ、コモンウェルスゲームズ、パンアメリカン競技大会、ならびにオリンピックに参加している。
この人気拡大は、連邦政府による女子7人制ラグビーへの資金援助と、2016年リオデジャネイロ夏季オリンピックへのカナダ代表チームの参加が後押しとなった。
カナダのシステムにおいて、大学レベルのラグビーは、国の代表入りを目指す選手にとって重要なステップとなっており、多くの代表選手は、大学チームと代表チームのプログラムを掛け持ちで参加している。
数百人の選手を抱える大学S&Cコーチの事情を考えると、学生アスリートを育成するプログラムの作成と実施において、ベストプラクティスを取り入れた枠組みを用いることの重要性を示している。
効果的なトレーニングプログラムを提供するためには、明確な哲学に基づいたトレーニングを実施する必要がある。
我々の観察から、パフォーマンスを最大化するトレーニングは、目的が明確であり、最大限の一貫性を有し、意識レベルが高く、選手が自身の能力を信じる気持ちを育むという特徴を備える。
これらの特徴によって、神経筋の能力と生理学的能力、ならびにソフトスキル(心理社会学的行動)が統合され、選手のパフォーマンスが最大化される。
S&Cコーチは、トレーニング哲学と並行して選手のキャリアを通じた身体育成を理解し、体系的な枠組みを実施することで、競技特異的なトレーニング、量、および強度を漸進させるための土台を提供しなければならない。
競技シーズンは通常、大学の学期と重なっており、前期は15人制ラグビーのシーズン、後期は7人制のシーズンに当たり、夏季(オフシーズン)に選手はクラブやアカデミーに戻る。多くの選手は、15人制と7人制の両方でプレーしている。
そのため、彼らは2つの競技シーズンを連続でプレーし、移行期、オフシーズン、プレシーズン、およびインシーズンのサイクルを複数こなしている。
選手が代表チームのキャンプやアカデミーに選出された場合、ピリオダイゼーションはより複雑になり、不適切なトレーニング負荷を避けるための連携が必要となる。
したがって、S&C コーチは、シーズンに基づくスケジュールに沿って指導することが求められ、4~5年間の枠組みが役に立つ。この枠組みにおけるトレーニング初期の目標は、準備状態の向上であり、勝つことに焦点が移る後期には、競技即応状態の向上と疲労の最小化が目標となる。
トレーニングの一貫性を最大化するためには、選手に適切な負荷を課すことが最も重要である。S&C コーチは、内的負荷の評価と、選手のトレーニングに対する反応の評価を、何らかの形で把握するよう努めるべきである。
経済的資源の限られる大学プログラムにおいて有用なのは、主観的運動強度(RPE)およびトレーニング時間といったトレーニング負荷の包括的な評価を用いて内的負荷(セッションRPE)を把握する方法や、選手のトレーニングへの反応を、トレーニング以外のストレス、疲労、身体的回復、健康状態、ならびにウェルビーイングをモニタリングする下位尺度を用いて主観的に評価する方法である。外的負荷もモニタリングすることが望ましいが、大学の予算や人員状況によって外的負荷を正確にモニタリングすることは、困難な場合がある。
主観的な質問票の結果については、zスコアのような、標準化されたスコアを報告することで、選手が通常より良い状態か悪い状態かを判断するのに役立つと考えられる。受傷期間による損失時間を最小化するため、傷害の発生と重症度(傷害負担)を追跡することで、予防措置を導入し、トレーニング介入の効果を継続的に評価することが重要である。
最後に、選手のトレーニングに対する反応(内的負荷)をトレーニングの指針とし、外的負荷を軽減または増加させる機会と捉えるべきである
本稿で提示した枠組みと推奨事項は、カナダ国内の環境に特化したものであるが、これらの方法論は、その他の環境やアスリート集団(全米大学体育協会[NCAA]など)にも適用可能である。基本的な原則の多くは、サブエリートおよびエリートレベルのラグビープログラム間で転用可能である。
ラグビーのトレーニングプログラムを作成するにあたっては、身体育成プロセスの指針となる概念的枠組みを採用することが不可欠である。それによって、トレーニングデザインと目標を一致させることができるだろう。
●フリー記事1:防衛大学校における幹部自衛官・タクティカルアスリートの育成に関する実践報告:日本版TSACモデルの構築に向けて
●フリー記事2:カナダの大学女子7人制ラグビー選手の身体育成に関する包括的アプローチ
●フリー記事3:コミットメントの醸成:アスリートと競技コーチによるストレングス&コンディショニングプログラムへの信頼を高める
その他、8-9月号には以下の記事を掲載しています。
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