
冬季五輪競技でもあるアルペンスキー。下肢の関節を大きく使って強い力を出し続け、筋力・パワー・持久力を高い水準で発揮しなければなりません。こうした過酷な競技特性を踏まえ、選手の身体能力を評価するために、体力テストが用いられています。
アルペンスキー競技では、股関節、膝関節、足関節の広い可動域にわたって、高いレベルでの等尺性、伸張性、短縮性筋活動を行う必要があります。競技で成功を収めるには、回転競技では約40秒間、滑降競技では最大2.5分間にわたって、高いレベルでの無酸素性持久力、有酸素性パワー、および力発揮能力が必要とされています。
こういった能力を選手ごとに把握することで、選手の長所と短所を特定して、プログラム作成にいかすことができます。つまり、アルペンスキー競技にとって最も効果的な体力テストを明らかにすることは重要であるといえます。
体力テストを効果的なものにするには、測定項目が、動作分析、生理学的評価、傷害/リスク評価、選手のニーズに基づいて決定されている必要があります。そして、適切に設計されたテストを定期的に実施することが重要です。
これにより、各選手が目指す生理学的特質に対するトレーニングの効果を数値的に評価することが可能になります。テストの目標は、コーチや選手にエビデンスに基づくアドバイスを提供することだとされています。
アルペンスキー競技で成功するには、生理学的にも技術的にも多くの特質が必要とされています。競技には回転(SL)、大回転(GS)、スーパー大回転(SG)、滑降(DH)の4つの基本種目があります。
種目によりやや違いもありますが、等尺性筋活動、低速の伸張性筋活動、低速の短縮性筋活動を高いレベルで実施する必要があり、筋の大きな共収縮が発生する点において明らかに他競技とは異なっています。
このようなアルペンスキー競技の要求を理解すると、選手を観察するには入念に選択したテストが不可欠なことが理解できます。
アルペンスキー競技では特に、競技の最も重要な側面とされるカービングターンにおいて高いレベルの神経筋系のコーディネーションを必要とします。

こういった回転において生み出される力は、通常は1~2.5Gですが、3Gに達することもあります(G:重力)。
回転動作中は、膝関節の屈曲(伸張性筋活動)、静的収縮(等尺性筋活動)、膝関節の伸展(短縮性筋活動)がみられ、膝関節の平均角速度(関節が動くスピード)は、SLで約69±11°/秒、GSで34±2°/秒、SGで17°/秒にもなります。これはランニングやスプリントよりも大幅に遅く、アルペンスキーで発生する筋活動が低速であることを示しています。
またSLでは最大随意筋収縮に近い筋活動が観察されます。したがって、筋力が不十分であると、姿勢を維持する能力と大きな力に耐える能力が制限されると考えられています。
アルペンスキーに効果的とされるテストとしては、動作分析に加え、競技の生理学的特性、傷害分析を踏まえ、以下の5つのテスト項目が挙げられています。
スターエクスカージョンバランステスト:姿勢の制御と神経筋系のコーディネーションの変化を評価する
カウンタームーブメントジャンプ(CMJ):筋力およびパワーの評価に加え、ジャンプ時の左右の脚の機能的アシンメトリー(非対称性)を評価することで障害発生リスクの低下に役立てる
等尺性スクワットテスト:アルペンスキー競技で一般に観察される等尺性筋収縮を評価する
2.5分間の反復負荷ジャンプテスト:選手の自重の 40%負荷を用いたCMJを休息(SLでは1~1.5秒、GSでは1.5~2秒、SGでは2.4~3秒)を挟みながら60回実施することで、無酸素性能力と競技における筋パワーの維持を評価する
20mシャトルランテスト:競技におけるエネルギー供給の約30~46%を占める有酸素性能力を評価する
記事では、アルペンスキーにおける生理学的特性や起こりやすい傷害についても詳しく紹介されています。トレーニングプログラムと効果的なテストを組み合わせることで、より良いトレーニングサポートにつなげることが、S&Cでは重要です。

NSCAジャパン2022年翻訳掲載分 Vol.29 No.1 p.49~54
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.43, No.2, 1-6