アスリートにとって睡眠は重要であることはよく知られていることですが、特に高校生アスリートなどは睡眠不足に陥りがちです。今日は睡眠とパフォーマンスという観点からお話ししてみたいと思います。
睡眠は、トレーニング後の回復に必要不可欠な要素であり、また唯一(代えの利かない)にして最大の有効な回復法であるとも言われています。トレーニング後に適切な生理的および心理的回復を得るには 7 ~9 時間の睡眠が必要と言われており、特に負傷中、遠征中、あるいはトレーニングの高負荷期や試合期は、より十分な睡眠が必要です。
しかし実際にアスリートの睡眠の質を評価すると、相当数のアスリートが質の低い睡眠をとっていることがわかりました。例えば、参考文献で紹介されている調査では、ドイツのエリートアスリートの79%が重要な試合や試合の前に入眠の困難を経験しています。試合期になると興奮や緊張でうまく眠れないということを経験したことのある方も多いと思います。
睡眠不足のアスリートでは、認知パフォーマンスや運動パフォーマンスの低下、反応時間の遅延、気分の不安定化が起こりやすいと言われています。
そこで有名なスタンフォード大学の男子バスケットボールチームを対象とした実験を紹介します。11名の選手に、1日の睡眠時間が 10時間に達するように5~7週間にわたって睡眠時間を延長させました。このように習慣として睡眠時間を延長させた結果、合計睡眠時間は110.9±79.7分増加し、スプリントタイム(282フィートで16.2 秒から15.5 秒)、フリースローの成功率(10本中7.9本から8.8 本)、3 ポイントシュートの精度(15本中 10.2本から11.6 本)がいずれも向上しました。
また選手らによると、機敏さと気分が向上して眠気と疲労が減少したとのことです。
このように睡眠不足のアスリートが睡眠を増やすことで、パフォーマンスやコンディションが高まる可能性が示唆されています。
効果的な睡眠をとるための内容を、表に紹介します。是非、ご自身に合った方法を見つけ、実践してみましょう。
先述のように試合期に睡眠の質が悪化する選手も多いということを考えると、特に普段から睡眠習慣の良くない選手は試合期ではさらに悪化する可能性があり、そのため普段から良い睡眠を取れるように実践していくことが大切です。特に高校生などは、大切な大会が夏に行われることが多く(インターハイや甲子園)、睡眠時間が短いと熱中症リスクも高まりますので、より普段から睡眠を意識していきましょう。
NSCAジャパン2016年翻訳掲載分 Vol.23 No.6 p.60~64
原文 Strength & Conditioning Journal Vol35, No.5, 43-47