• HPCコラム
  • スポーツ・健康
  • 筋力向上には高強度のレジスタンストレーニングが必要 

    ジムでトレーナーと共にトレーニングをする女性

    筋トレを計画的に行っているのに、なかなか筋力が伸びない、あるいは筋肉のサイズが変化しないといった状況に悩んでいる人も多いと思います。今回は、筋力や筋肉のサイズを向上させるために、中強度の筋収縮運動を疲労するまで実施することで、高強度の筋収縮時と同様に運動単位が動員されるのか、検証した研究をご紹介します。

    Neural Drive is Greater for a High-Intensity Contraction Than for Moderate-Intensity Contractions Performed to Fatigue
     
    高強度の筋収縮のほうが疲労を伴う中強度の筋収縮よりも、多くの運動単位を動員する 

    Miller, Jonathan D.; Lippman, Jeremy D.; Trevino, Michael A.; Herda, Trent J.
    J Strength Cond Res 34(11): 3013–3021, 2020

    はじめに 

    筋力を発揮する際には、それに応じた運動単位が動員されます。運動単位とはα運動神経が支配する筋線維からなり、活性化される運動単位の数や発火頻度によって、発揮される筋力が変化します。最大筋力やパワーの増加は、運動単位の動員や発火頻度の増加、筋間の協調性の向上またはこれらの組み合わせによって起こります(1, 2)。 

    一般的に、運動単位の動員はサイズの原理に基づいて起こります。サイズの原理とは、筋力発揮の際に小さな運動単位から動員され、必要とされる力が増加するに従い、より大きな運動単位へと順に活性化されていくことをいいます(一部例外があり、爆発的な動作などの場合は選択的に高閾値の運動単位が動員されます)。 

    今回紹介する研究では、中強度の筋収縮を疲労限界まで行う場合と、高強度の筋収縮の場合の運動単位の動員の程度を比較し、筋収縮の強度によって動員される運動単位に違いがあるかどうかを検証しています。 

    目的

    この研究の目的は、中強度の筋収縮運動を疲労する限界まで行うことで、高強度の筋収縮時と同じように運動単位を動員するかどうかを検証することである。 

    ジムでトレーナーと共にトレーニングをする女性

    被験者

    9名の健康な男女(男性7名、女性2名、年齢=22.78±4.15歳、身長=173.78±14.19 cm、体重87.39±21.19 kg)

    方法

    被験者は、3回の等尺性最大筋収縮(MVC:Maximum Voluntary Contraction)、MVCの90%での等尺性台形状筋収縮(Isometric Trapezoidal Contraction)(REP90)およびMVCの50%での繰り返しの等尺性台形状筋収縮を挙上できなくなるまで行い、その1レップ目(REP1)と最後のレップ(REPL)を分析に用いた。

    外側広筋の表面EMG(筋電図)を記録し、活動電位を動員限界(RT:Recruitment Threshold)を伴った単一MU(運動単位)の活性事例へと抽出した。運動単位の活動電位の振幅(MUAPAMP:Motor Unit Action Potential Amplitude)、平均活性率(MFR:Mean Firing Rate)も記録した。 

    各被験者の直線的MFR、MUAPAMPに対するRT、指数関数的MFRに対するMUAPAMPの関係性が計算された。有意水準はp≦0.05に設定した。 

    結果

    MFRに対するMUAPAMPの関係性におけるBターム(p = 0.001、REPL = −4.77 ± 1.82 pps·mV−1、REP90 = −2.63 ± 1.00 pps·mV−1)およびMVCの40%で動員された運動単位の予測MFR(p < 0.001、REPL = 11.14 ± 3.48 pps、REP90 = 18.38 ± 2.60 pps)はREPLよりもREP90のほうが大きく、REP90中の活性頻度のほうが大きいことを示している。

    さらに、REPL中よりもREP90中において、より大きな平均(p = 0.038、REPL = 0.178 ± 0.0668 mV、REP90 = 0.263 ± 0.128 mV)および最大(p = 0.008、REPL = 0.320 ± 0.127 mV、REP90 = 0.520 ± 0.234 mV)MUAPAMPが記録された。 

    高強度の筋収縮中は、中程度の筋収縮を疲労限界まで行うことと比較すると、より大きな運動単位が動員されていた。大きさが同様の運動単位においては、より大きな活性率を維持していた。 

    結論・応用

    運動単位の活性の最大化を試みる場合は、中強度の運動を疲労限界まで行うよりも、高強度のレジスタンストレーニングを用いるべきである。

    オリジナルの文献はこちら 

    まとめ 

    Schoenfieldらによるメタ分析(3)では、低重量と高重量のレジスタンストレーニングをそれぞれ疲労限界まで行ったときの筋力と筋肥大に対する効果を分析しています。その分析の結果、筋肥大については低重量と高重量のレジスタンストレーニング間の有意な差は示されなかったものの、筋力に関しては高重量のレジスタンストレーニングにおいてより大きな向上が認められたとの報告があります。 

    さらに、Looney(4)らによる、中程度の重量と高重量のエクササイズを疲労限界まで行った場合の筋電図の振幅を比較した研究では、より重い重量のほうが筋活性を最大化できると報告されています。今回紹介した研究においても、これらの先行研究を裏付けるようなことが示されました。 

    運動単位の動員は、疲労限界まで行った場合でも、低~中重量の場合はそれに応じた運動単位しか動員されません。より多くの運動単位を動員したい場合は、より強度の高い運動が必要とされるようです。 

    冒頭でも述べた通り、最大筋力やパワーの向上にはより多くの運動単位の動員が必要です。そのような適応を望む場合は高重量のレジスタンストレーニングを取り入れる必要があるでしょう。 

    参考文献

    1. Haff, G. Gregory、Triplett, N. Travis編著 篠田邦彦総監修 『NSCA決定版 ストレングストレーニング&コンディショニング』第4版、ブックハウスHD、2018年 
    2. Pucci, A.R., Griffin, L., and Cafarelli, E. (2006). Maximal motor unit firing rates during isometric resistance training in men. Experimental Physiology 91, 171–178 
    3. Schoenfeld, B.J., Grgic, J., Ogborn, D., and Krieger, J.W. (2017). Strength and hypertrophy adaptations between low- vs. High-load resistance training: A systematic review and meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research 31, 3508–3523 
    4. Looney, D.P., Kraemer, W.J., Joseph, M.F., Comstock, B.A., Denegar, C.R., Flanagan, S.D., Newton, R.U., Szivak, T.K., DuPont, W.H., Hooper, D.R., et al. (2016). Electromyographical and Perceptual Responses to Different Resistance Intensities in a Squat Protocol. Journal of Strength and Conditioning Research 30, 792–799 

    こちらの記事もチェック
    筋肥大の近道は“量”?“強度”?効果的なトレーニング戦略

    関連の記事

    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    手のひら冷却で深部体温ダウン!夏場のパフォーマンス向上法

    格闘技をする男性
    • スポーツ・健康

    【S&Cジャーナル解説】格闘技のためのコンディショニング術

    • スポーツ・健康

    熱中症とトレーニング

    音楽を聴きながらボールを使ったトレーニングをしている女性
    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    体幹スティフネスを高めるには?動的vsアイソメトリック

    • スポーツ・健康

    アイススラリーで熱中症対策を

    • スポーツ・健康

    高齢者の“動ける力”を守る:高速レジスタンストレーニングの効果と実践法

    股関節のストレッチをしている男性
    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    ストレッチだけじゃない!股関節の柔らかさの秘訣は「体幹の安定性」 

    • おうちエクササイズ
    • スポーツ・健康

    かんたん、おうちエクササイズ!
    「フロントスクワット」

    サッカーをする子どもたち
    • スポーツ・健康

    【ジュニア指導者必見】ウォームアップ・クールダウンの「本質」を再確認

    • スポーツ・健康

    安全で効果的な高地トレーニングをするために

    • スポーツ・健康

    危険な暑熱下でのレース。有効な熱中症対策は早めの「暑熱順化」

    • スポーツ・健康

    速さと機敏さが勝敗を分ける?バレーボールのアジリティとトレーニング戦略

    アーカイブ