
車いすテニスは、障害のない家族や友人と一緒にプレーできる数少ないパラスポーツのひとつです。唯一の大きなルールの違いは、車いす選手に2バウンドでの返球が認められている点です。ただ、車いすテニス選手のトレーニングにおいては、各選手の機能レベルに基づいた調整に重点を置く必要があります。
上半身後面の筋群における筋力、バランス、および安定性を向上させるエクササイズを取り入れることは、車いすテニス選手にとって、障害のない選手以上に重要と考えられています。車いすを日常生活と競技に使用すると、“プッシュ”動作の量が“プル”動作に比べて非常に多くなり、上半身前面の筋力により重点が置かれるため、前面の筋群が過度に発達するおそれがあり、オーバーユース障害のリスクが高まります。
また、逆バックハンド(フォアハンドと同じグリップ、同じラケット面で打つバックハンド)と呼ばれることの多い固有のストロークは、障害のないテニス選手とは本質的に異なるテクニックです。このテクニックには筋力が必要であり、主に上背部の筋群を動員しなければなりません。
これらのことから、車いすテニス選手に対しては、上半身の前面のエクササイズよりも後面のエクササイズをより多い割合で取り入れることが推奨されています。
車いすテニス選手の機能レベル等を踏まえ、場合によりエクササイズ実施方法に調整を加える必要があります。
例えば、従来サイズのベンチは、車いす選手には幅や長さが足りない可能性があります。車いす選手に適した幅や長さのベンチが利用できない場合、床上で行うエクササイズがより適切な選択肢となるかもしれません。
従来サイズのベンチを使用するのであれば、テーピングやストラップでベンチに身体を固定すると安定性を高めることができるでしょう。

また、上半身後面の筋群を強化するために、レジスタンスバンドなどを用いて、エクササイズを実施することもできます。

記事では、車いすの設定やオンコートの動作スキルなど他の考慮すべき側面についても言及されています。また全米テニス協会が、車いすテニスを協会の様々な事業部門に統合することにより、選手が利用できるリソースが拡大し、トレーニングの競技の向上につながった経緯が紹介されています。
また記事内では、「相互メンターシップ」という用語が引用されています。パラスポーツにおけるコーチングの特徴的な側面として、コーチやほかのチームメンバーが、新たに形成される関係性に共同メンターとしてアプローチする必要があります。
S&Cコーチは自分の職務に詳しいかもしれませんが、対する選手もまた、自身の障害や車いすの設定、そして障害とともに生きる日々の困難を知っています。そのため、特に最初のうちは、S&Cプログラムに必要な調整を施すために、お互いがメンターとなって教えあい、より良いプログラムを形成していくことになるというのが、「相互メンターシップ」の考えです。パラアスリートに対するトレーニング指導にあたり、とても参考になる考え方ではないでしょうか。
ぜひ記事本文もご一読いただき、日々のトレーニング指導に役立てていただければと思います。
NSCAジャパン2025年翻訳掲載分 Vol.32 No.8 p.36~43
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.46, No.2, 117-124
