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  • 子どもの筋トレは危険?迷信を科学で検証する

    DB, トレーニング

    「子どもに筋トレをさせると成長が止まる」——そんな話を耳にしたことはありませんか?しかし実際には、科学的根拠に基づいた指導のもとで行えば、子どものレジスタンストレーニングは安全で効果的であることがわかっています。本記事では、よくある迷信を科学的に整理しながら、子どもの筋トレに期待できる効果と、安全に実施するためのポイントを解説します。

    子どものレジスタンストレーニングは、長らく「成長を阻害する」「骨端軟骨を損傷する」といった迷信が語られてきました。しかし近年の研究では、適切な指導とガイドラインの下で行えば安全かつ効果的であることが証明されています。

    プログラムは筋力や心肺機能、骨密度、体組成の改善に加え、自信や積極性を育む心理的効果も期待できます。特に過体重の子どもにとっては負担感が少なく、楽しみながら取り組める有効な運動手段です。さらに若いアスリートの傷害リスク低減にも役立つ可能性があり、専門的監督のもとで安全に実施することが重要です。 

    子どものためのレジスタンストレーニング 

    従来、子どもには主に有酸素運動が推奨されてきましたが、適切なガイドラインに従えばレジスタンストレーニングも安全で効果的な運動です。

    子どものレジスタンストレーニングに関する研究はこの10年間で増加し、その安全性と有効性は十分に証明されてきています。多くの専門機関もこれを条件付きで認めており、学校やスポーツ施設で取り組む子どもたちが増加しています。

    この記事では、レジスタンストレーニングの潜在的なメリットと問題点に焦点を当て、安全で効果的なプログラムデザインの要点を概説します。 

    一般的な迷信 

    青少年のレジスタンストレーニングの安全性と有効性に関する疑問に対しては、感情的な反応に惑わされず、科学的文献を再検討することが重要です。科学的な見地から見ると、有資格者の監督下で適切に計画されたプログラムは、少年少女にとって安全で有効なコンディショニング方法であることが明らかになっています。

    以下で、レジスタンストレーニングにまつわる一般的な迷信について解説します。 

    迷信:レジスタンストレーニングは子どもの成長を阻害する。 
    事実:現時点での所見では、管理された環境で定期的なレジスタンストレーニングを行う場合、子どもの身長が伸びないという証拠は示されていません。レジスタンストレーニングへの定期的な参加は、いずれの発達段階においても子どもの成長に好ましい影響を及ぼすことは科学的に支持されています。ただし、遺伝的限界を超える効果をもたらすこともありません。

    迷信:子どもは、レジスタンストレーニングによって骨端軟骨を損傷する。 
    事実:有資格者の監督下で適切に計画されたプロスペクティブ研究からは、骨端軟骨板の骨折はこれまで報告されていません。興味深いことに、臨床医の中には、低年齢の子どもの骨端軟骨は強く剪断力に対する抵抗力があるため、思春期前の子どもにおける骨端軟骨損傷の危険性は、年長の子どもよりも低いと考えている者もいます。 

    迷信:子どもはテストステロンを十分に分泌しないため、筋力を向上させることはできない。 
    事実:テストステロンは、筋力の向上に不可欠というわけではありません。テストステロンをほとんど分泌しない女性や高齢者であっても、目覚ましい筋力の向上を経験するという研究結果からも明らかです。相対的に、すなわちパーセントで比較すると、トレーニングによって生じる子どもの筋力向上は、思春期の若者および成人の筋力向上に匹敵します。

    迷信:レジスタンストレーニングは子どもにとって危険である。 
    事実:適切な監督と指導があれば、レジスタンストレーニングに伴う危険性は、子どもが日常的に参加するその他の活動と全く変わりません。最も重要なことは、厳重な管理・監督、年齢に合わせた指導、安全なトレーニング環境の提供です。しかし、子どもがウェイトルームで定められたガイドラインに従わずに悪ふざけをしたりすれば、どのような種類の活動であっても事故は起こり得ます。

    迷信:レジスタンストレーニングを始めるのは、早くても12歳になってからにすべきである。 
    事実:指示を理解し、その指示に従えるだけ情緒的に成長していれば、レジスタンストレーニングはいつ始めても構いません。参考までに例を挙げると、我々が実施している青少年のトレーニングプログラムには、7歳と8歳の少年少女が多数参加しています。

    迷信:レジスタンストレーニングは若いアスリートだけのものである。 
    事実:レジスタンストレーニングは若いアスリートのパフォーマンスを向上させる一方で、青少年のレジスタンストレーニングプログラムへの日常的な参加は、どのような能力の少年少女にも多大な健康的価値をもたらします。例えば、レジスタンストレーニングは、骨粗鬆症を起こすリスクのある少女の骨密度を改善する可能性や、長時間の有酸素性運動を好まない過体重の子どもに、運動に対する興味を起こさせる可能性を持っています。 

    青少年のレジスタンストレーニングに期待できる効果 

    適切に計画され、十分な監督下で行われるプログラムは、少年少女に健康的および体力的価値をもたらします(表1)。筋力、筋パワー、筋持久力に加え、心肺機能、身体組成、血中脂質、骨密度、運動能力、心理的尺度にも良い影響を与える可能性があります。また、過体重の子どもの身体組成を改善にも効果的です。

    さらに、レジスタンストレーニングによって筋力の向上と関節周囲の筋バランスを改善することで、青少年アスリートの傷害発生率を減少させる可能性があります。レジスタンストレーニングを含むコンディショニングプログラムに参加した若者で傷害発生率が減少したという研究が複数報告されており、子どもに対しても同様の効果が期待できると考えられています。 

    トレーニング効果の表

    プログラムデザインのポイント 

    適切な指導とプログラムがあれば、レジスタンストレーニングは強力なコンディショニング方法となります(表2)。子どものトレーニングは、週に2~3回、1日以上の間隔を空けて行うことが推奨されます。最初は低強度で、徐々に負荷を増やしていくことが重要です。重要なのは、重量よりも適切なエクササイズテクニックを重視することです。 

    まとめ 

    青少年のレジスタンストレーニングが、他の活動よりリスクが高いという証拠はありません。これは専門的なコンディショニング方法であり、有資格者による監督、適切な負荷、段階的な漸進、十分な回復を必要とします。

    プログラムを計画する際は、筋力向上だけを目的にするのではなく、子どもが自分自身の身体について学び、安全にトレーニングを実践でき、身体活動に対してより積極的に参加を望むようになることが、同様に重要です。 

    参考文献

    子どものためのレジスタンストレーニング
    NSCAジャパン Human Performance Center 学生アスリート向け特別利用

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