• スポーツ・健康
  • シーズン中のトレーニング継続

    ストレングス&コンディショニングにおいては、ピリオダイゼーション計画に基づいて年間にわたって継続していくことが、体力の維持・向上、傷害予防といった点で非常に大切です。 しかし、試合が多いシーズン中では、時間の制約上、計画的なトレーニングを継続していくことが難しい、という話を聞くこともあります。そこで、今回はシーズン中のトレーニング実施について紹介します。 

    トレーニングを中断すると・・ 

    スポーツ現場では、シーズンに入ると試合スケジュールが過密になり、試合に伴う疲労、トレーニングに使える時間の減少などが影響して、トレーニングの実施頻度が下がったり、中断したりすることがあります。しかし、トレーニングを数週間中断することで、筋力を含む体力レベルが低下する場合があり、パフォーマンスに影響が出たり、傷害リスクが高まったりする可能性があります。

    ここで、14名のナショナルレベルの球技アスリートを対象にした研究を紹介します。16週間のレジスタンストレーニング後にトレーニングを4週間中断したところ、1RMベンチプレス(-9%)と1RMスクワット(-6%)が有意な低下を示しました。興味深いことに、彼らアスリートはトレーニングを4週間中断していたものの、通常の技術練習と実戦を継続していました。この研究からはシーズン中においてレジスタンストレーニングを含まない技術セッションだけでは筋力の維持が難しいことが示唆されています。 

    シーズン中のトレーニング実施

    試合期が長く続く場合、頻繁な試合スケジュールに伴う疲労を管理しつつ、筋力やパワーを維持するためのトレーニングは中〜高強度(例:85〜93%1RM)で少量から中程度の量によって構成されることが推奨されています。またパワーにフォーカスする際は、バリスティックエクササイズ(ジャンプ系およびスロー系)とオリンピックリフティングおよびその派生種目等の実施が大切になります。ただ実際のトレーニング負荷は練習や移動、試合スケジュールによって調整されることが多く、選手のパフォーマンス能力と回復を注意深くモニタリングすることが非常に重要です。 

    以下に、サッカーを対象にしたシーズン中のトレーニングスケジュールの例を記載します。試合が週に1回の場合と2試合の場合で変更されており、実際のスポーツ現場の参考になるのではないかと思います。

    このスケジュールにおいては、3つのトレーニングプログラム(筋力、パワー、傷害予防)で構成されており、具体的な実施例は以下の画像の通りです。試合が週1回(土曜)のスケジュールでは、 筋力セッションを火曜に実施することで、試合前に最大限の回復時間をとることができます。一方、パワーセッション(木曜)は、低量かつ高速で動作するため、筋収縮の総時間がはるかに少なくて済むことから、筋力セッションに比べ疲労がはるかに低いと考えられ、試合に向けた爆発的パワー発揮の意識と疲労の試合への影響を考慮します。このように各日のトレーニング要素を絞ることで、時間の制約に対応しやすくなります。 

    週2回試合がある場合には、筋力セッションから完全に回復するための十分な回復時間が得られない可能性があるため、筋力セッションは行わず、比較的疲労への影響が小さいパワーセッションと傷害予防プログラムのみを実施することも検討されます。(※実際には、筋力とパワーの両方を強調したプログラムを実施することもあるでしょうし、現場の状況で変わるのではないかと思います) 

    傷害予防プログラムは、競技に多発する傷害要因に対応したものです。傷害予防効果は、筋力およびパワーセッションからも得られるため、この傷害予防プログラムはこれらを補完する目的で実施します。 

    最後に

    このトレーニングスケジュールを紹介している著者は、「試合のスケジュールは常に変動するため、トレーニングプログラムの作成には柔軟性をもたせる必要がある。S&Cコーチは、エリートレベルにおいては、本当の意味で「教科書的な」ピリオダイゼーション方策を実践することは難しく、多くの場合、「最も適した」方策を用いなくてはならないことを認識すべきである」と述べています。それぞれのチーム・アスリートの状況は異なりますので、アスリートと状況に応じたトレーニングプログラムを計画、実施していただければと思います。

    参考文献

    NSCAジャパン2019年翻訳掲載分 Vol.26 No.4 p.24~34
    原文 Strength & Conditioning Journal Vol40, No.3, 12-22

    NSCAジャパン2017年翻訳掲載分 Vol.24 No.4 p.44~55
    原文 Strength & Conditioning Journal Vol37, No.2, 72-83

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