今年もあと2ヵ月を切りました。スポーツでも本格的にウインタースポーツの季節となってきました。そこでこの冬の期間中は、定期的にウインタースポーツに関するトレーニング、ピリオダイゼーション等のトピックに関する記事をご紹介していきたいと思います。
今回取り上げるのはフリースタイルスノーボードです。
スノーボード競技は、1998年にオリンピックの正式種目に採用されて以降、人気が高まっています。トリック(技)の難易度も大幅に上昇していますが、エビデンスに基づくトレーニング計画やケガ予防のプログラムの指針などはあまり示されていません。
一方で、この種目においては多様な身体活動が実施されるため、パフォーマンスを最大化し、ケガのリスクを低減させるために、幅広い身体的特性が求められます。
スノーボードに必要とされる筋力の要素としては、下半身の伸張性筋力、大腿四頭筋と体幹部の筋力、体幹の捻る力、そして上半身の引く力などが挙げられています。このうち下半身の伸張性筋力については、ケガ予防という観点から、着地動作やエア(ジャンプや空中技)の着地に伴い力を吸収する能力に関連しているとされています。またスノーボードでは膝のケガが頻発するため、大腿四頭筋の筋力が重要であるとされています。大腿四頭筋の筋力を向上させることは、基本的な滑走局面での疲労を最小限に抑え、「ビッグエア」から着地する際の力の吸収を最適に行なうことに繋がるためです。
なお、筋力向上のもととなる、筋を大きくすること、いわゆる筋肥大については、空中技を成功させるのに苦労している軽量や低体重の選手には推奨されていますが、不必要な体重増加はジャンプ能力低下につながる可能性もあるため、基本的にはプレシーズンの早い段階で少量の筋肥大トレーニングを処方するに留めるべきとされています。
スノーボードでは爆発的かつ高速の動作が多用されます。そのため爆発的な下肢筋力、いわゆるパワーはジャンプ高を高め、滞空時間を長くし、より難易度の高いトリックの実施を可能にすると考えられます。
また体幹を捻るためのパワーを利用して、重心をボードの中心の真上に維持しながら回転度数を最大化させることができることが示されています。
この記事では、アマチュア、ユース育成、セミプロレベルの選手のためのトレーニング計画が示されています。
プレシーズンにおいては、先に挙げたような身体的要素を向上させるために目的ごとにトレーニングを期分けするブロックトレーニングの考え方が示されています。そして競技シーズンが始まって以降は、個々の試合に向けたテーパリングとピーキングを重視するプログラムに変わります。
スノーボード選手にとって効果的なピーキングの方法は、試合前に全体的なトレーニング量を減らすために、数日前からトレーニング強度と質は高く保ちつつ、量を減らすことだとされています。
記事には、プレシーズンの具体的なトレーニングプログラム例やエクササイズバリエーションのリスト、またコンディショニング方法、ウォームアップの考え方なども紹介されています。
まだまだ文献の少ない競技ではありますが、こういった記事を通して、自身のトレーニング、あるいは指導されている選手のトレーニングをアップグレードしてみてはいかがでしょうか。
NSCAジャパン2022年翻訳掲載分 Vol.29 No.10 p.47~56
原文 Strength & Conditioning Journal Vol43, No.5, 1-11