ストレングス&コンディショニングを行う大きな目的の一つとして、パワー発揮能力の向上というものがあります。
今回はそのパワーを向上させるための考え方について説明したいと思います。
力学では仕事率はパワー(P)と呼ばれ、仕事(W)をそれに要した時間(t)で割ることによって算出されます。
P=W/t
力学における仕事(W)は、力(F)と物体の移動距離(d)との積と定義されますので、物体の移動が発生しない運動では、パワーが0となります。
また、パワーは力(F)と速度(v)の積としても求められます。
P=F×v
例えば移動がないアイソメトリック運動である「プランク」を実施して、「あの人はプランクが得意だから、パワーがある証拠ですね」と言及した場合、これは正確な表現ではありません。なぜなら、この場合、パワーは0だからです。
NSCAでは、ストレングス&コンディショニングを通して、高いパワー発揮を目指したトレーニングに力を入れていますので、この機会におさらいしてみましょう。
パワーをストレングス&コンディショニングの文脈で説明すると、「負荷をできるだけ速く移動させる能力」となります。
例を挙げてみると、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトなどにおいて高重量を扱う際、大きな力を発揮することとなりますが、速度としては低速になってしまいます。
そのため、発揮パワーは比較的高速で動作を行うことができる(素早く負荷を移動させることができる)オリンピックリフティング(クリーン、スナッチなど)の1/2~1/3にとどまります。
オリンピックリフティングは動作スキルの習得が簡単ではないとされていますが、パワー発揮能力を高めるためには、重要なエクササイズとなりますので、ぜひ指導できる有資格者や専門家のところで取り組んでいただけたらと思います。
NSCAジャパンでは、独自のプログラムであるコーチコースにおいてオリンピックリフティングコースを展開しておりますし(10月27日開催予定)、日本ウエイトリフティング協会と合同でハングクリーンを含めた実技検定を行っています(11月9日開催予定)。
また中々オリンピックリフティングに取り組めない場合、代替として以前の記事でご紹介したプライオメトリックトレーニングも推奨されます。プライオメトリック動作を用いたジャンプトレーニングやメディシンボールトレーニングもパワーを効率的に向上させるトレーニングとして知られています。
プライオメトリックトレーニングもコーチコースとして展開しておりますので(12月1日開催予定)、ぜひ、ご興味のある方はご参加してみてください。
このほかにも、測定機器を用いたVelocity-based training(速度基準トレーニング)もパワー発揮向上のためのトレーニングとして効果的とされています。
パワー発揮能力向上を必要とする方は、是非ご自身にあった方法を選択し、安全かつ効果的に取り組んでいただければと思います。
・NSCAジャパン2021年翻訳掲載分 Vol.28 No.7 p.26~34
Strength and conditioning journal Vol.42, No.3, 30-39
・S&Cジャーナル2023年6月号より
Velocity-based training:VBTによるトレーニングの可視化とパフォーマンス向上戦略
・<書籍>NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識 第3版 第4章「バイオメカニクス」第17章「プライオメトリックトレーニングとスピードトレーニングのプログラムデザインとテクニック」