
The Special Interest Groups(SIG)は、各々が定めるS&Cに関するトピックスについて、会員・非会員問わず議論し、広く情報を共有することで資質向上を目指すグループです。また、S&CおよびNSCAジャパンの発展に自ら貢献すること、次世代の人材育成に携わることも目指しています。
本SIGは、スポーツサイエンスにかかわるS&Cコーチや研究者等を対象に、2025年に発足しました。
近年のテクノロジー活用の進展を踏まえ、現場で求められるスポーツ科学者的視点や資質について議論し、競技力向上に必要なスポーツ科学的情報を共有することを目的としています。
今回は、初の実施となった本SIGミーティングの概要と、現場での課題や今後の方向性についてご紹介します。
当日は、以下の流れで進行しました。
15:00–15:10 趣旨説明、自己紹介、アンケート概要
15:10–15:15 アンケート結果共有
15:15–15:40 ラグビーリーグワンにおける取り組み発表
15:40–16:10 発表に対する質疑応答・ディスカッション
16:10–16:30 参加者からの質問に基づく総合ディスカッション
冒頭では、参加者属性の把握を目的として、Googleフォームによる任意アンケートの回答時間を設けました。
その後、座長の山下より、本SIG設立の背景と趣旨について説明しました。
2021年に NSCA’s Essentials of Sport Science が刊行され、2022年にはCertified Performance and Sport Scientist(CPSS)資格が開始されました。日本においても2023年に翻訳書『NSCAスポーツ科学の基礎知識』が発刊されましたが、国内でのCPSS保有者はまだ少なく、スポーツ科学の知見を現場で実践的に活用する体制や理解は十分に浸透しているとは言えない状況です。
こうした背景から、スポーツサイエンスの現場での役割や活用方法について議論する場として、SIGキックオフミーティングを開催する運びとなりました。
続いて、副座長の山本より、レッドハリケーンズ大阪における実践事例を紹介しました。チームで活用しているテクノロジーやデバイス、測定頻度や運用タイミングに加え、S&C業務と並行したデータ活用の導入過程や課題を共有しました。
課題としては、特にデータ収集が目的化してしまう点や、得られた情報を意思決定につなげる難しさといった点が示され、測定設計から運用までを含めた全体設計の重要性が強調されました。また、単に数値を提示するのではなく、現場の文脈に応じて解釈し、意思決定に活かす役割が求められることも示されました。
さらに、レッドフラッグは複数指標を組み合わせて設定され、その判断には専門的裁量が含まれること、データ管理については契約段階で明確化されていることなど、実務的な取り組みも共有しました。
参加者の所属、職種、保有資格、研究経験などに関するアンケートの結果は、以下図表のようになりました。参加者は大学教員、プロチームサイエンティスト、S&Cコーチ、大学院生、医療職など多様な背景を有していました。


参加者からは、AI時代のスポーツサイエンティストの在り方、キャリア形成、日本におけるスポーツサイエンスの発展、データ活用や管理、CPSS取得要件など、多岐にわたる関心が示されました。時間の都合上、すべてを十分に扱うことはできませんでしたが、今後のSIG活動における重要な検討課題であることが確認されました。
質疑応答では、S&Cとデータ運用の役割分担、スポーツサイエンティストの職域や権限、現場への伝え方、測定の再現性と負担のバランスなどについての議論が行われました。その中で、スポーツサイエンティストは単なる分析者ではなく、意思決定を支援する役割を担う存在であるという認識が共有されました。
さらに、SIGの方向性についても議論が行われ、対象を研究者とするのか、S&Cコーチの科学的素養向上を目的とするのか、あるいは専門職育成を目指すのかといったターゲット設定の必要性が示されました。
スポーツサイエンティストの役割は、チーム内で分担する段階から、内部人材の転向、専門職としての採用へと発展してきた一方で、現状では役割は統一されておらず、S&Cとの兼務も多く見られます。
こうした状況を踏まえ、今後のSIG活動では対象を明確にしたうえで活動内容を設計する必要があるという意見が寄せられました。
本SIGはキックオフとして開催しました。今後は継続的な活動を通じて、スポーツサイエンティストの役割整理とコミュニティ形成を進めていく予定です。
対象層の明確化や教育的機能の整理、キャリアパスの提示、実践事例の共有などを通じて、日本におけるスポーツサイエンティストの発展に寄与していくことが期待されます。

