先日パリオリンピックが閉幕しました。日本は海外での大会における金メダル・メダル総数ともに過去最多を更新しました。なかでもフェンシング種目は団体、個人ともに数多くのメダルを獲得し、盛り上がりを見せたのも記憶に新しいことと思います。そこで今回はフェンシングのためのストレングス&コンディショニングに関する記事をご紹介いたします。
フェンシングは一般に、一連の爆発的な攻撃と低強度の運動および回復を挟んで行なう競技であり、優れた知覚能力と対戦者の行動に対して素早く適切に反応する能力が発揮されるスポーツとされています。そしてこれらの能力には、筋力やパワー、あるいは高いパワーを発揮しつづけるパワー持久力などの特性を向上させることが必要であり、トレーニングにおいてもこういった特性に焦点があてられるとされています。
また動作を分析してみても、フェンシングにおいて攻撃時に最も多くみられるランジでは、後ろ脚が強力な力発揮を行なうことで素早い動作につながります。ここでもやはりパワーが重要であり、加えて高いRFD(力の立ち上がり率:どれだけの力をより早く発揮させられるかの指標)を発揮することに注目しています。これらの能力を鍛えるためには、爆発的なトレーニング、具体的にはプライオメトリックス、いわゆるジャンプトレーニングや、オリンピックリフティングがフェンシングの特異性に適合しており、推奨されています。
アスリートの身体能力の確認、トレーニングプログラムの有効性に関するモニタリング等を目的とした体力測定においては、フェンシングの競技分析を踏まえる必要があります。パワーやRFD、また繰り返される競技動作等を加味し、垂直跳び跳躍高、反応筋力指数(できるだけ素早く高く跳ぶ能力)、左右の筋力バランス、アジリティ能力などを組み込むことが推奨されています。
一般的なトレーニングプログラムにおいては、約4週間かけて特定の運動能力(最大筋力やパワーなど)を強調させるようにメニューを組んでいきますが、これはフェンシング選手のためのオフシーズンのトレーニングに採用すべきとされています。一方で、インシーズンでは大会も多いことから、少し異なるアプローチが必要となります。具体的には、トレーニングごとに筋力を目的としたものとパワーを目的としたものを交互に繰り返す方法です。
フェンシングに関する科学的研究はきわめて少なく、トレーニングに関するものも多くありません。そういった中でも、科学的データとともに現場での経験も踏まえた、今回ご紹介したような記事は大変貴重であるため、指導現場でも参考にしてみてはいかがでしょうか。このほかにも記事本文では、有酸素性トレーニングの考え方、傷害分析についてもふれられていますので、ご一読いただければと思います。
NSCAジャパン2013年翻訳掲載分 Vol.20 No.7 p.28~36
Strength and conditioning journal Vol.35, No.1, 1-9