• スポーツ・健康
  • 筋肥大の近道は“量”?“強度”?効果的なトレーニング戦略 

    「筋肉を大きくしたいなら、重さをどんどん増やすべき?それともセット数を増やすべき?」トレーニングを続ける中で、多くの人がぶつかる疑問です。今回紹介する記事では、4~12週間というあるトレーニング期間(メゾサイクル)において、筋肥大を着実に進めるために、強度と量をどう調整すべきかを科学的視点から解説します。

    強度か量か、あるいは両方か

    メゾサイクルを通してトレーニングを着実に漸進させるうえで、まず押さえておかなければならないのは、パフォーマンスの低下を伴わずに耐えられる疲労の総量には限りがあるということです。

    トレーニングによる疲労を考慮せずに強度、量を増やしていくと、オーバートレーニングにつながったり、あるいは単純にトレーニングを完遂したりすることができません。したがって、回復能力には限りがあることを踏まえ、すべてを一度に増やすことはできず、両者の間である程度バランスをとるしかないことを念頭に置く必要があります。 

    「量」と「強度」のどちらが筋肥大により効果的かについては、残念ながら直接比較した研究はまだありません。しかし、これまでの研究結果から、それぞれの効果についていくつかの傾向が示唆されています。

    量、ここでは特にセット数ですが、セット数の増加が筋肥大に効果をもたらすことは、研究において裏づけられています。週のセット数が増えるほど、筋肥大の効果も大きくなるという「用量反応関係」があることが示されています。トレーニング経験者であっても、量を増やすことで筋成長が続くことが明らかになっています。

    一方で、相対的強度(%1RM)の増加は、筋肥大を確実に増やすという決定的なデータはまだありません。相対的強度の増加は、疲労を大幅に増大させる一方で、セット当たりの筋肥大効果は向上しない可能性が高いと考えられます。

    つまり週単位でレップ数を減らし、代わりに挙上重量を急激に増やしていくようなプログラム(ある週は1 セットにつき10 レップ、翌週は8 レップ、その翌週は6 レップなど)は、筋の成長を引き起こす方法として最適ではない可能性が高いとされています。 

    これらのことから、この記事では、メゾサイクルは「無理なく回復できる程度のトレーニング量」から始め、週ごとに少しずつセット数を増やしていく方法が効果的だとされています。こうすることで、適応が進む中でも筋肥大への刺激を継続的に与えられます。

    具体的には、1つの筋群につき週10セットから始め、毎週2セットずつ増やしていきます。20セットに到達したら、疲労を軽減するために回復期間を設けるのが効果的です。

    強度については、同じ重さで続けるのではなく、複数の強度を組み合わせるのが効果的です。プログラムの中で多様な強度を取り入れるほうが、ひとつの強度だけを使うより筋肥大につながりやすいことが分かっています。そのため、設定したレップ数(例:5回、10回、20回)がメゾサイクルの終盤で大きく崩れないように、重量を少しずつ増やして調整していくことが推奨されます。

    メゾサイクルにおけるセット数の漸進を示したグラフ

    まとめ

    筋肥大を着実に進めるには、強度よりもトレーニング量(特にセット数)を漸進の主要な変数とすることが、賢明な実践方法として推奨されています。もちろん、強度を変えることも必要ですが、量は筋肥大と明確な用量反応関係を示す一方で、強度の効果はそこまで明確ではありません。

    したがって、量の増加を第一に考え、疲労の蓄積を考慮しながら強度を調整していくことが、効果的な筋肥大トレーニングへの鍵となるでしょう。 

    記事データ 

    NSCAジャパン2021年掲載分 Vol.28 No.5 p.72~76

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