これまで、子どもにはスイミングや自転車などの有酸素運動が推奨されてきました。一方で、レジスタンストレーニングも、適切なガイドラインに基づけば、子どもにとって安全かつ効果的な運動であることが示されています。今回は、青少年のトレーニングに関する一般的な迷信や誤解、期待できる効果、さらにリスクや注意点についてご紹介します。
はじめに参考文献の中から、青少年のトレーニングにおける迷信と事実をいくつか紹介いたします。
迷信:レジスタンストレーニングは子どもの成長を阻害する。
事実:現時点における所見では、管理された環境で定期的なレジスタンストレーニングを行う場合、子どもの身長が伸びないという証拠は示されていない。いずれの発達段階におい てもレジスタンストレーニングへの定期的な参加は、子どもの成長に好ましい影響を及ぼすことはほぼ間違いない。ただし遺伝的限界を超える効果をもたらすこともない。
迷信:子どもはテストステロンを十分に分泌しないため、筋力を向上させることはできない。
事実:テストステロンは、筋力の向上に不可欠というわけではない。テストステロンをほとんど分泌しない女性や高齢者であっても、目覚しい筋力の向上を経験するという研究結果からも明らかである。相対的に、すなわちパーセントで比較すると、トレーニングによって生じる子どもの筋力向上は、思春期の若者および成人の筋力向上に匹敵する。
迷信:レジスタンストレーニングは子どもにとって危険である。
事実:適切な監督と指導があれば、レジスタンストレーニングに伴う危険性は、子どもが日常的に参加するその他の活動と全く変わらない。最も重要なことは、厳重な管理・監督、年齢に合わせた指導、安全なトレーニング環境の提供である。しかし、子どもがウェイトルームで定められたガイドラインに従わずに悪ふざけをしたりすれば、どのような種類の活動であっても事故は起こり得る。
本文献に記載の研究によると、適切に処方され、十分な監督下で行われる青少年のレジスタンストレーニング・プログラムは、少年少女に対して、健康的および体力的価値をもたらすことが示唆されています。
また、過体重の青少年の数は世界的に増加し続けており、身体組成に及ぼすレジスタンストレーニングの効果について注目が集まっており、一般的に体脂肪の減少には有酸素性運動が処方されているが、過体重の青少年がレジスタンストレーニング・プログラムに定期的に参加することにより、身体組成が改善されることが明らかになっています。
青少年のトレーニングプログラムを計画する専門職は、一人ひとりの子どものニーズ、関心、能力に合わせ、慎重に対応しなければならない。子どもの能力を超えたプログラムを処方することは、傷害のリスクを増加させるだけでなく、レジスタンストレーニングの楽しさを台無しにする可能性もあることを頭に入れておく必要があります。
注意深く計画されたプログラムで有資格者による指導を受ける、という条件が満たされれば、レジスタンストレーニングは子どもにとって、最も強力で効果的なコンディショニングの方法の1つとなり、様々なタイプの機器の使用、およびセット数やレップ数の多様な組み合わせは、子どもにとっても安全で効果的であることが証明されています。また、安全で効果的なトレーニングを提供する為にも、それぞれの子どもの関心や不安に耳を傾け、各々の進歩を観察し、一人ひとりの子どもの身体面および心理面の特徴を理解する必要があります。体力レベルが不十分な青少年の場合、同じトレーニングプログラムに参加していても、仲間が耐えられる同量のエクササイズに耐えられない場合もあるため注意が必要です。
子どもを指導する上で重要なのは、有資格者による指導と管理・監督を行うことや安全で危険を伴わない運動環境を整えることの他にも、自分自身の身体について子どもたちに教えること、安全なトレーニングの手順を奨励すること、そしてすべての参加者がレジスタンストレーニングや身体活動に対して、より積極的な態度で臨むような興味を持てるプログラムを提供すること、これらすべてが等しく重要となります。その他、NSCAでは以下のポジジョンステイトメントの発表や、NSCA PARKで子どもやユース世代に関する記事も公開しておりますので、そちらも是非ご覧ください!
青少年のレジスタンストレーニング: NSCAポジションステイトメント 最新版
長期的な運動能力の開発に関する NSCAのポジションステイトメント