2月から5月ころにかけて、スギ花粉を中心に花粉の飛散量が多い時期となります。花粉症が運動パフォーマンスやコンディションに与える影響と、花粉症対策のポイント、花粉症治療の注意点について紹介します。
① 競技パフォーマンスの低下
花粉症はアスリートの競技パフォーマンスにさまざまな悪影響を及ぼします。主な影響は以下の通りです。
呼吸機能の低下: 鼻づまりや気道の炎症により、酸素摂取量が減少し、持久力の低下を引き起こします。
集中力の低下: 目のかゆみや鼻水、くしゃみによる不快感が続くことで、試合やトレーニングへの集中が難しくなります。
睡眠の質の低下: 鼻づまりや咳の影響で睡眠が妨げられ、疲労回復が遅れ、コンディション維持が困難になります。
② 免疫系への影響
アスリートは激しいトレーニングによって免疫機能が一時的に低下することがあります。花粉症によるアレルギー反応は、さらに免疫系へ負担をかけ、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかるリスクを高める可能性があります。
③ ドーピングリスクの増加
花粉症の薬には、ドーピング規則で禁止されている成分が含まれるものがあります。特に、市販薬の中には使用が禁止されている成分が含まれていることがあるため、注意が必要です。禁止物質を含む薬剤の使用は、意図せずドーピング違反となる可能性があります。
環境省では花粉症対策(普段の生活で行える予防方法や、治療について)のリーフレットを作成、配布しており、花粉症の予防と治療について紹介しています。予防としては、大きくは、「花粉を避ける」「花粉を持ち込まない」の2点です。主に屋外でのトレーニング時に対策が必要です。詳細はリーフレットを確認してください。
また、花粉症治療には対症療法と、免疫療法(アレルゲン免疫療法)があります。
対症療法:内服薬、点鼻薬、点眼薬をそれぞれ、または組み合わせて花粉による症状を抑えるための治療法
免疫療法:花粉の成分が含まれた薬剤を定期的に投与し、花粉の成分に体が慣れるようにして、花粉が体内に入ってきてもアレルギー反応が発生しないようにするための治療法
先に述べた通り、花粉症の対症療法に用いられる薬剤の中には、ドーピング規則で禁止されている成分が含まれているものがあります。また、漢方薬にも禁止物質を含むものがあるため、注意が必要です。
一方で、ドーピング規則に抵触せず、花粉症の治療に使用できる薬剤も多数存在します。公財)日本スポーツ協会の「アンチ・ドーピング使用可能薬リスト(※)」には、使用できる処方薬や市販薬が記載されていますので、参考にすると良いでしょう。
※リストは、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の禁止表国際基準(1月1日発効)に伴い、毎年改定されます。
また、症状や生活スタイルに合わせて適切な薬剤を選択するため、医師や薬剤師に相談することが推奨されます。公財)日本アンチドーピング機構では、禁止物質・方法の確認について、アスリート向けのページを用意しているので確認すると良いでしょう。
アスリートが花粉症の治療を行う際には、ドーピング規則に違反しないよう、使用する薬剤の成分を十分に確認し、専門家に相談することが重要です。適切な薬剤を選択することで、花粉症の症状を効果的に管理し、競技パフォーマンスを維持することが可能となります。
アンチドーピングについては、機関誌2021年7月号の記事も参考にしてみてください。