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  • トレーニングの歴史

    1994年に発刊されたNSCAジャパン機関誌第1号において、初代理事長の窪田登先生がトレーニングの歴史について執筆されています。今回はその内容を中心にご説明したいと思います。

    紀元前6世紀にはトレーニングが行われていた!

    史実によると、紀元前6世紀にレスリング選手として活躍したクロトナ(現在のイタリア)のミロ氏が、漸進的過負荷に従ってトレーニングした最初の人物とされています。
    ミロ氏は古代オリンピックのレスリング競技で6回優勝し、24年間無敗であったという伝説の人物です。彼は筋力強化のために、子牛が成牛になるまで毎日肩に担いで歩くトレーニングをしたということです。当時のギリシャにはこのようなトレーニングの実施や怪力を誇る人物に関するエピソードが多数ありますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

    加えて、古代ギリシャ時代に行われていた跳躍競技で、選手が両手に持っていたハルテレスがダンベルの原型ともいわれています。またイタリアで発見された紀元前3世紀のモザイク画では、ダンベルを持つ女性の姿が描かれています。これほど昔から、現代と同じような原理や器具を用いて体を鍛えるということが行われていたことが驚きですね。

    ウェイトトレーニングが体系化されたのは19世紀

    時は大きく流れ、ダンベルなどのトレーニングが体系化されたのは19世紀と言われており、特に東プロシア出身のユージン・サンドウ(1867-1925)が近代ウェイトトレーニングをさらに体系化したとされています。
    サンドウ氏が体系づけたトレーニングが、科学的な体系を成したのは、第二次世界大戦後と言われており、1956年に運動生理学者のP・カルポビッチ氏とウェイトトレーニング専門家のJ・マーレイ氏が共同執筆した「Weight Training in Athletics」において次のように述べられています。

    「能力を養うにはオーバーロードを活用する。持ち上げられるのがきついと感じられるウェイトを持ち上げるのである。もし持久力を目的にするのなら、軽~中重量を用いて回数を徐々に増やしていけばよい。ウェイトトレーニングに関する科学的研究は、つい最近始まったばかりなのである。」

    つまりこの時代から、現在のようなウェイトトレーニングやプログラムデザインに関する知見を探索するようになったものと思われます。
    また当時はウェイトトレーニングをすると、スピードや柔軟性が低下すると言われていたにもかかわらず、ウェイトトレーニングを実施し始めた選手やコーチ、研究で事象を明らかにしていった研究者などの存在が、その後のウェイトトレーニングの隆盛に繋がっていると窪田先生は述べられています。

    NSCAの歴史

    NSCA本部はそういった時代の流れに呼応するように、1978年に設立され、加えて機関誌第1号(Journal of Applied Sports Science Research)が1979年に発刊され、研究誌Journal of Strength and Conditioning Researchが1987年に発刊されました。設立のきっかけは、大学のアメリカンフットボールチームがウェイトトレーニングを継続したことで体力が向上し、成績を向上させたことでトレーニングの重要性が論じられるようになったことに起因しています。現在、世界90か国ほどに6万人弱のNSCA 有資格者がいます。
    NSCA ジャパンは1991年に設立され、現在では会員数は1万人を超え、有資格者は7000人ほどの規模になっています。

    現在、認定者が世界各国におり日本国内でも多数の認定者の方々がご活躍されていることの背景には、今回ご紹介した先人の方々の多くの知恵と努力があってこそと感じます。先人の方々に敬意を表します。

    参考文献

    ◎S&Cジャーナル1994年spring号より
    「巻頭言:創刊に際して」
    「スポーツと筋力トレーニング小史」

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