
スポーツクラブやトレーニング施設において、有線放送などの音楽が流されている光景は一般的かと思います。また、イヤホンやヘッドホンを用いて音楽を聴きながらトレーニングしている方を目にすることも多いのではないでしょうか。こういったトレーニング時、あるいはトレーニング前に音楽を聴くことにはどういった意味、効果があるのでしょうか。
音楽が運動パフォーマンスに及ぼす影響は、異なる運動課題や様々な提供方法を用いて研究されています。音楽が運動パフォーマンスにもたらすエルゴジェニック効果(パフォーマンスを向上させる作用)にはいくつかのメカニズムがあるとされています。
音楽はモチベーションを高めるとともに、主観的運動強度を低減させることも明らかになっています。つまり、音楽は、運動へのモチベーションや楽しさを高めると同時に、運動に伴う疲労に関連する不快感を緩和させるといわれています。
ただし、こういった音楽がレジスタンストレーニングに対してどう作用するかについてまとめられているものはなく、記事ではこの点に着目しています。
筋持久力に関しては、ほとんどの研究において、好みの音楽を聴く条件でパフォーマンスが向上したと報告されています。具体的には、音楽を聴取した場合、1セットのエクササイズにおいてそれ以上繰り返せなくなるまで行った際、音楽を聴かなかった場合と比較して、1~4レップ多く挙上できました。
また、一定の割合の最大随意収縮を維持する時間が、好みの音楽を聴くことで、パフォーマンスが12%向上したことが示されています。
これらの研究を通して、エクササイズ中に好みの音楽を流すことは、曲のテンポがあるレベル以上(例:120bpm)に設定されているかぎり、レジスタンスエクササイズにおいて筋持久力を向上させる可能性があるとされています。
レジスタンスエクササイズの実施中に好みの音楽を聴くことは、筋持久力、握力、エクササイズ時の速度、エクササイズの発揮パワーにエルゴジェニック効果をもたらす可能性が認められています。
その一方で、好みでない音楽と、音楽を聴かなかった場合では、両者にパフォーマンスの差がないとされています。

好みの音楽の影響や、その他記事で紹介されている、音楽ジャンルの影響、あるいは歌詞の内容やハーモニー、メロディの影響については、まだまだ研究が少ないとされています。
今後の研究が待たれるところではありますが、それでも音楽がトレーニングに悪い影響を与えることはほとんど報告されていません。
トレーニング環境内のルールを守りつつ、周りの方の迷惑にならない範囲で、記事で言及されている推奨事項を参考にトレーニング時に音楽を取り入れてみるのはいかがでしょうか。
NSCAジャパン2023年翻訳掲載分 Vol.30 No.2 p.59~66
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.44, No.4, 77-84