
近年、伸張性過負荷を効率よく引き出す手法として、フライホイールエキセントリックトレーニングが注目されています。数ある方法の中でも、なぜ今この手法が選ばれているのか――その理由を見ていきます。
伸張性とは、筋肉が力を発揮しながら引き伸ばされていく局面のことを指します。近年、この伸張性局面に大きな負荷をかけられる方法として、フライホイールエキセントリックトレーニングが注目されています。
その理由としては、マシーンを持ち運びできること、豊富なエクササイズバリエーションがあること、抵抗を調節することができることなど、他の方法にはない利点が多いことがあります。
フライホイールエキセントリックトレーニングとは、回転するフライホイール(弾み車)の慣性を利用して、伸張性局面に大きな負荷をかけるトレーニング方法です。
この方法で用いる機器は、回転シャフトに取り付けられた1枚または複数のフライホイールとロープで構成されています。フライホイール機器は、直前の短縮性局面で回転ホイールに蓄積された慣性を巻き戻すことにより、機械的な伸張性過負荷が可能です。
運動を始め、やがてロープが十分に繰り出されると(短縮性局面)、その後は慣性によりフライホールは回転を続け、ロープは巻き戻されます。すると短縮性局面からの運動エネルギーが伸張性局面に伝達され、ディスクの回転を停止させるためには、同等の力が必要となります。

トレーニング負荷は、速度を上げたり、フライホイールの重量を追加したりすることで変更できます。伸張性過負荷をかけるこのトレーニング方法の有効性は、短縮性局面でできるかぎり最大速度で力を発揮し、伸張性局面で回転運動を停止させようと意図することにあります。
このトレーニングの利点としては、多種多様なエクササイズが可能なだけでなく、運動学的三平面のすべてにおいて、競技によく似た、競技特異的な動作を行うことができること、初回レップから最大努力となる負荷がかかることなどが挙げられています。
このトレーニング法によって、アスリートの筋力、パワー、スピード、方向転換能力などの様々な身体能力が向上することが示されています。また、筋や関節の傷害からアスリートを守る積極的な適応を促進すること、腱障害の治療に効果的なトレーニング方法であることが、研究によって示されています。
フライホイールを用いたトレーニングは、プログラム全体の一部として活用することが重要です。フライホイールの経験が浅い場合には、1セッション当たり1~2 種目、1~2セットから開始すれば十分で、経験によって2~4種目を2~4セットのように増やすことも可能でしょう。
また伸張性過負荷がかかることを考慮すると、エクササイズの適切なテクニックを前提することは非常に重要です。ケガにつながるような代償運動を確実に回避する必要があります。
このほかにも記事では、適切に伸張性過負荷を生み出すための方法やプログラムデザインの考え方などが紹介されています。研究により効果が示されている一方で、誤った方法では適切な負荷がかからないとされています。
誤ったテクニックによるアクシデントを避けるためにも、この記事を参考に、新たなトレーニング刺激を導入してみてはいかがでしょうか。

NSCAジャパン2025年翻訳掲載分 Vol.32 No.4 p.53~70
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.46, No.2, 234-250