
スクラムは、ラグビーの中でも特に複雑で力学的な要素が多いプレー。パフォーマンス向上には、首や背中、股関節を中心とした筋力発揮能力の向上と、年間を通じた計画的トレーニングが欠かせません。
本記事では、スクラム動作に特化した筋力強化の考え方と、オフシーズンからプレシーズンにかけてのピリオダイゼーション戦略を紹介します。
ラグビーは、強度の高いランニングに加えて、スクラム、モール、ラック、ラインアウトなど、特異的な活動を伴います。なかでもスクラムは、ラグビーの身体的な特性を典型的に表しており、対戦相手に対する身体的優位を得るために最も重要な活動とされています。またスクラムは、複雑な活動であり、最適なパフォーマンスのためにはテクニックと筋力が根本的に重要とされています。
そこで今回は、ラグビーにおけるスクラムで発揮される力を増大させるためのトレーニング、ピリオダイゼーション等に関する記事をご紹介いたします。
スクラム成功のためのカギとなる要因は、持続的で大きな水平方向の力を産み出す能力です。この力を増大させるために、各アスリートは、首、背中、股関節、膝、足首の伸展筋群の筋力の大きな向上が必要とされています。これらは、強度としては、基礎筋力(85~93%1RM)や最大筋力(93~100%1RM)のトレーニングが最も効果的です。
またフロントロー(スクラムの前列)のフォワードは、相手チームの最初の衝撃を吸収し、安定したスクラム基盤を作る役割があります。これを行いつつ、かつ脊椎の傷害を予防するためには、首および背中の筋力をより強力に鍛える必要があります。
一方で、バックロー(スクラムの後列)のフォワードは、スクラムから離れて、ラインを突破するために素早く加速したり、相手選手をタックルしたりすることがしばしば要求されます。そのため、力の立ち上がり率とスプリント能力が一層重要とされています。

ラグビーにおけるオフシーズンは、一般的に回復段階とされています。
プレシーズン前半は、フィールド上でのコンディショニングや技術および戦術セッションを行います。試合による干渉が少ないため、多くの場合、最大筋力、つまりスクラムに必要な筋力を向上させる最適な段階です。
この段階では、スクワットやデッドリフトなど、一般的なエクササイズ種目を用いて筋力向上に努めるとともに、ランジやステップアップなどの一側性のエクササイズも含めます。これらによって、脊椎への負荷を減少させ、筋力の非対称性を修正し、力発揮だけでなく、コーディネーションやバランスを改善させて、スクラムの向上を図ります。
そしてプレシーズン後半は、フィールド上でのコンディショニングだけでなく、水平面を中心としたレジスタンストレーニングなど、スクラムやラグビーに特異的なレジスタンストレーニング実施に最適な段階になります。水平面の動作を強化するためには、スレッドプッシュやスレッドプル、スクラムマシーントレーニングの導入が推奨されています。

記事では、スクラムのバイオメカニクス的な特徴や、フォワードに求められる身体特性や体力測定種目、また具体的なピリオダイゼーション例などが紹介されています。
スクラムにかかわらず、ラグビーではレジスタンストレーニングは重要です。各動作に特化したプログラムを念頭に、ぜひ記事を参考にされてみてはいかがでしょうか。
NSCAジャパン2019年翻訳掲載分 Vol.26 No.7 p.18~29
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.41, No.1, 64-74