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  • アイススラリーで熱中症対策を

    近年の猛暑の中、トレーニングや試合中の熱中症対策はますます重要になっています。深部体温(身体の内部の温度)が上昇しすぎると、パフォーマンス低下や意識障害を引き起こし、死亡率が高まるとされています。今回ご紹介する記事は、身体を冷却するのに優れた効果を有するとされる、アイススラリーの可能性についてです。

    アイススラリーとは

    アイススラリーは、微細な氷と液体が混ざった流動性のある飲み物です。氷が溶ける時の「融解熱」を利用して効率的に身体を冷やすことができ、水よりも高い冷却効果が期待されています。また氷のようにかみ砕く必要がなく、そのまま飲むことができるため、胃や消化管を通じて身体の内側からの冷却が可能です。固形の氷よりも流動性があり、水よりも冷却能力があるため、効率良く身体を冷却できる形態といえます。

    深部体温と運動能力

    運動中、体温は末梢血管の拡張や発汗によって調節されます。しかし、高温環境や防具の装着、脱水状態などでこの仕組みが働かなくなると、深部体温が上昇しやすくなります。研究では、水分補給をしないと運動時間に伴って血液量が減り、直腸温(深部体温の指標)が上昇することが報告されています。一方、適切に水分を補えば運動中の体温上昇が抑えられ、脱水によって起こる運動能力の低下も抑えられるとされています。

    アイススラリーの可能性

    アイススラリーは、運動前に一時的に体温を下げるプレクーリングに効果を発揮します。記事で紹介されている実験では、運動前にアイススラリーを摂取した場合、運動開始前の深部体温が低下したとされています。またその状態で運動すると、4℃の飲料を運動前に飲んだ場合と比較して体温の上昇速度は変わらないが、運動中の深部体温は低く抑えられ、運動継続時間も延びたことが示されています。
    さらに、運動後や中断時(例えばハーフタイム)にアイススラリーを摂取した場合でも、深部体温を速やかに低下させる傾向が確認されています。アイスバスのような大掛かりな設備が不要で、飲むだけで冷却できるので、現場での利便性が非常に高いです。

    まとめ

    高温環境でのトレーニングや、アメリカンフットボール、剣道、フェンシングなどの防具を装着するスポーツにおいて、プレクーリングや休憩時のクーリングとしてアイススラリーの導入が有効である可能性がうかがえます。また、若者に比べて皮膚血管拡張機能や発汗機能が低下し、深部体温が上昇しやすい高齢者や、体温調節能が未発達な子どもに対しても、水分補給に加えてアイススラリーを活用することが熱中症予防の一助になりうるかもしれません。夏のトレーニング・スポーツ現場における、水分・電解質補給とともに効果的な対策のひとつとしてのアイススラリーの可能性について、より詳細な内容はぜひ本文をご一読ください。

    記事データ

    NSCAジャパン2019年掲載分 Vol.26 No.6 p.7~11

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