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学業のストレスと怪我の関係
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    高校や大学のS&Cコーチの方々から、授業のテスト期間前後に選手の怪我が増えてしまうという相談をいただくことがあります。今日は、実際に学業のストレスがどのような影響を与えるのか、ご紹介したいと思います。

    はじめに

    スポーツにおける怪我の原因として、疲労や筋力不足といった身体的な要因は広く認識されています。しかし、怪我の発生に対する心理的な要因についても多くの研究がなされています。ストレスの大きさやその対処がうまくできないことは、怪我の発生率の高さと関係があり(1、2、3)、また負の生活上の出来事によるストレスは怪我の発生に対して最大で30%関与しているという報告(1)もあります。さらに、ストレスなどの心理的な要因はオーバートレーニングにも影響を与えるとされています(4)。

    学生アスリートにおいては、学業とスポーツの両立が求められ、スポーツにおける身体的なストレスのみならず、定期試験や課題などの学業的なストレスに多くさらされます。今回紹介する研究は、学生アスリートにおいて学業的なストレスが怪我の発生に対して影響を与えるかどうかを検証しています。

    Effect of Physical and Academic Stress on Illness and Injury in Division 1 College Football Players
    ディビジョン1の大学フットボール選手において身体的および学業のストレスが病気やけがに与える影響

    Mann, JB, Bryant, KR, Johnstone, B, Ivey, PA, and Sayers, SP.
    J Strength Cond Res 30(1): 20–25, 2016

    目的

    健康のストレス-怪我モデルは、ストレスが大きいときに身体的な怪我をより多く経験すると示唆している。この研究の目的は、大学フットボールのディビジョン1チームに所属するアスリート(n=101)における怪我によるプレーの制限に対して、身体的および学業のストレスが大きくなることによる影響を評価することである。

    被験者

    ディビジョン1大学フットボール選手101名(年齢19±1.4歳、体重107.1±19 kg、身長187.2±6.8 cm)

    方法

    シーズン中の週を3つのレベルに分類した:身体的ストレスが高い(HPS:High Physical Stress)(例:プレシーズン)、学業のストレスが高い(HAS:High Academic Stress)(例:中間や期末試験などの定期試験のある週や感謝祭の直前の週)そして学業のストレスが低い(LAS:Low Academic Stress)(例:インシーズン中の定期試験のない通常の週)。

    各州において、選手が怪我による制限があったかどうかを記録し、これによって縦断的な2値アウトカムを作り出した。データは、各被験者において時間の経過に伴う繰り返しの観察によって引き起こされた依存関係を適切に考慮するために、階層的ロジスティック回帰モデルを用いて分析された。回帰モデルの有意レベルはp≦0.05とした。

    結果

    トレーニングキャンプ中(HPS)の怪我によるプレーの制限のオッズはHASの週(オッズ比(OR:Odds Ratio)=2.05、p=0.0003)やLASの週(OR=3.65、p<0.001)と比較して最も高かった。しかし、HASの週の怪我によるプレーの制限のオッズはLASの週に比べて2倍近く高かった(OR=1.78、p=0.0088)。さらに、HPSの週とHASの週に報告されたすべてのアスリートの怪我の発生率の差は、レギュラーとしてプレーするアスリートのみを考慮したときに無くなったことから(OR=1.13、p=0.75)、HASはプレーする機会の多いアスリートに対してHPSよりもより大きな影響を与えるかもしれないことを示唆している。

    結論・応用

    コーチは、両方の種類のストレス要因を理解し、HASのように怪我の発生しやすい時期はトレーニング方法を慎重に考慮するべきである。

    オリジナルの文献はこちら
    https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2016/01000/effect_of_physical_and_academic_stress_on_illness.3.aspx

    学業的なストレスが高い週は、低い週と比較して2倍近く怪我が多く発生しています。このことから、学業的なストレスが怪我の発生の要因となることがうかがえます。KerrとMinden(3)は、生活上のストレスの大きな出来事は怪我の発生や重症度と正の相関があったと報告しており、ストレスが高くなると怪我の発生件数や重症度が高くなるようです。またストレスの高さだけでなく、そのストレスに対してうまく対処できるかどうかということも怪我に関係しているようです。Smithら(1)やIvarssonとJohnson(2)はストレスに対して上手に対処できないアスリートほど怪我の発生率やリスクが高かったと報告しています。

    またこの研究では、身体的なストレスの多い週と学業的なストレスが多い週を比較しており、よりレギュラーとしてプレーする選手ほど学業的なストレスの影響を受けやすいようです。筆者らは、これらの選手はレギュラーでいること自体が生活上のストレスの一つであると説明しており、学業のストレスと合わさることでより大きな心理的なストレスにさらされることがうかがえます。 心理的なストレスはスポーツ中の注意を散漫にし、また筋の緊張が高まることで動作がぎこちなくなり、怪我の発生しやすい状況を作り出すとされています(1)。

    スポーツのコーチらは、生活上の心理的なストレスが身体に与える影響を理解する必要があります。そして、特にレギュラーとしてプレーする選手やアスリートに対しては、生活上のストレスが高いときには身体的なストレスを減らすなどの対応が必要となるでしょう。

    参考文献

    1. Smith, R.E., Smoll, F.L., and Ptacek, J.T. (1990). Conjunctive Moderator Variables in Vulnerability and Resiliency Research: Life Stress, Social Support and Coping Skills, and Adolescent Sport Injuries. Journal of Personality and Social Psychology 58, 360–370
    2. Ivarsson, A., and Johnson, U. (2010). Psychological factors as predictors of injuries among senior soccer players. A prospective study. Journal of Sports Science and Medicine 9, 347–352
    3. Kerr, G., and Minden, H. (1988). Psychological factors related to the occurrence of athletic injuries. Journal of Sport Exercise Psychology 10, 167–173
    4. Hollander, D., Meyers, M., and LeUnes, A. (1995). Psychological Factors Associated with Overtraining: Implications for Youth Sport Coaches. Journal of Sport Behavior 18, 3.

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