NSCAジャパン機関誌『Strength and Conditioning Journal Japan』2025年8-9月号を発刊しました。NSCAジャパン会員のみ読むことができる機関誌ですが、毎号数本はどなたでも読めるフリー記事をご用意しています。
●8-9月号のフリー記事
・一般企業における傷害・疾病予防と運動指導
・職業疲労のタイプと寄与因子
・速度を基準とするトレーニング:クリティカルレビュー
今回はその中から、「一般企業における傷害・疾病予防と運動指導」をご紹介します。
この記事では、一般企業で働く会社員に対して、運動を軸とした障害・疾病予防の活動について、労働災害の現状や一般企業の健康課題などとともに取り上げられています。
近年、死亡災害や休業4日以上のような重大な労働災害は減っている一方で、増えてきている労働災害の事故の種類があります。それは転倒や、腰痛などの仕事上行なった作業(動作)に対する反動により、身体を痛めてしまうものなどです。
これらのような転倒や腰痛による労働災害の発生は、年齢とともに増加すること、またその影響は女性の方が大きいことがわかっています。これは、年齢によって腰痛や転倒の要因の一部である筋力やバランス能力の低下をきたすことで発生リスクが高まったこと、若年層の運動習慣低下による運動能力低下や、人口減少に伴う労働人口の減少などが影響していることが考えられています。
こうした背景を踏まえ、記事では企業における社員向けの障害・疾病予防と運動指導について、実際の取り組み事例が紹介されています。例えば、社員向けの運動を用いた健康セミナー実施です。健康増進に関するセミナーや生産性を上げるためのセルフケアセミナーとして、社員研修を実施する例があります。
なお、こうしたセミナー実施時に注意すべき点があります。それは、①専門用語を使わないこと、②実技を多めに実施すること、③実技は安全性が高く、すぐその場でできるものを選択することです。また、セミナーの事前打ち合わせについても、社員の健康診断情報や労働災害情報、現場の声を把握し、これらをセミナーに反映させることが重要です。
血液検査や血圧などの内科的な検査が多い一般的な健康診断についても、腰痛や肩こりなど自覚しやすい身体の不調と関連する柔軟性、筋力、筋肉量、姿勢、体力を測定し、現場の健康課題/労働災害課題を“見える化”するためのサポートとして、体力測定会の実施が紹介されています。体力測定会については、従業員を任意参加とする企業が多いため、募集方法を入念に確認する、もしくは企業へ協力を仰ぐことが薦められています。
海外では産業理学療法士やトレーナーを産業保健スタッフとして雇う国が散見されるなか、近年日本においても、一般企業の健康施策や健康経営を外部からサポートする会社において、運動指導専門職を雇う企業も増えてきているとのことです。
今後一般企業における運動指導の機会に触れることもあろうかと思いますので、ぜひ記事本文もご一読いただき、参考にしてみてはいかがでしょうか。
●フリー記事1:一般企業における傷害・疾病予防と運動指導
●フリー記事2:職業疲労のタイプと寄与因子
●フリー記事3:速度を基準とするトレーニング:クリティカルレビュー
その他、8-9月号には以下の記事を掲載しています。
・オーケストラ楽器奏者のためのストレングス&コンディショニングの考察:実践的アプローチ
・重要な指標の選択:パフォーマンスプロファイリング、神経筋疲労モニタリング、および傷害リハビリテーションテストのためのカウンタームーブメントジャンプの使用の比較
・ストレングス&コンディショニングのフィールドの専門職業化を目指して
・持久系自転車競技選手のためのペダリング4象限別におけるストレングス&コンディショニングに関する考察
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