• S&Cジャーナル
  • 今月のS&Cジャーナル7月号「ジュニア世代の野球選手に対する投球障害予防」ほかフリー記事2本 

    NSCAジャパン機関誌
    『Strength and Conditioning Journal Japan』
    2025年7月号発刊 

    NSCAジャパン機関誌『Strength and Conditioning Journal Japan』2025年7月号を発刊しました。NSCAジャパン会員のみ読むことができる機関誌ですが、毎号数本はどなたでも読めるフリー記事をご用意しています。

    ●7月号のフリー記事
    ・ジュニア世代の野球選手に対する投球障害予防
    ・モータースポーツドライバーの生理学的プロフィールに関するスコーピングレビュー:アスリートのトレーニングに対する示唆

    今回はその中から、「ジュニア世代の野球選手に対する投球障害予防」をご紹介します。 

    子どもの投球障害予防

    この記事では、ジュニア世代の野球選手に発症しやすい傷害とメカニズム、また体力要素からみたジュニア期における投球障害発生のリスク因子などを紹介した上で、ジュニア期の投球障害予防プログラムを取り上げられています。

    野球選手の、特にジュニア期(学童期)における投球障害発生のリスク因子としては、肩・股関節の柔軟性に加え、姿勢の悪化がリスクとして高いとされています。また、小学4年生から5年生、あるいは小学5年生から6 年生において、投球障害発生群における下肢バランス能力が低いという調査結果も報告されています。下肢長や体重など、身体の成長に伴うバランス機能の発達が追い付いていないことにより投球障害リスクとなる可能性が示唆されています。

    記事では、投球障害予防を目的に身体機能改善を図るプログラムYokohama baseball- 9(YKB- 9)が紹介されています。このプログラムは全20分で、肩・肘・前腕・体幹・股関節のストレッチング(9種類)と腱板・肩甲骨運動・体幹スタビライゼーション・投球動作を模した下肢エクササイズ(9種類)で構成されています。このプログラムをウォーミングアップや補強として、また自宅にて実施させた場合、1年間における肘内側障害発生率が減少したことが示されています。
    ただ、このプログラムの年間を通した実施率(コンプライアンス)は決して高くなく、また実施した場合でもコンプライアンスが高いほうが、障害発生率が低い結果も得られています。これらのことから、予防プログラムによる投球障害予防では、コンプライアンスを高めることが重要であると指摘されています。

    コンプライアンス向上には、コーチ・指導者の予防プログラムに対する理解が不可欠であるといえます。実際のジュニア期選手における指導現場では、野球のパフォーマンス向上に主眼が置かれており、傷害発生までにその予防を意識することは少ないという現状があります。指導者のプログラムへの理解を深めるためにも、投球障害だけでなく野球パフォーマンスに関連する因子も合わせて検討し、それらをプログラムに含めることが重要であることが述べられています。

    記事ではその他投球障害予防プログラムである、「Yokyo-03」も紹介されています。一方で、これらのプログラムの社会実装や一般化は進んでおらず、研究レベルや地域単位での域を出ていない課題についても触れられています。実施者に応じたフレキシブルなプログラムの必要性が訴えられていますが、まずは障害・外傷の実態と、効果的な予防プログラムの考え方について、記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

    ●フリー記事1:ジュニア世代の野球選手に対する投球障害予防

    ●フリー記事2:モータースポーツドライバーの生理学的プロフィールに関するスコーピングレビュー:アスリートのトレーニングに対する示唆

    その他、7月号には以下の記事を掲載しています。
    ・レジスタンストレーニングと時間制限食の複合効果が身体組成と神経筋の適応に及ぼす影響に関する考察
    ・早期専門化に伴う健康リスクに対処することを目的とした野球の傷害とパフォーマンスに対する率先的取り組み
    ・高齢者のための血流制限ウォ-キング:簡潔なレビュー
    ・マイクロドージング:チームスポーツにおけるレジスタンストレーニングのプログラム作成方法として用いるための概念的枠組み

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