
様々な形式の組み技や打撃技を含む格闘競技である、総合格闘技(MMA)。MMA選手のトレーニングについては、まだまだ研究されていない部分があります。そんななか今回紹介する記事では、MMA選手の生理学的プロフィールを明らかにし、そのうえでS&Cのプログラムデザインにおけるガイドラインが提示されています。
過去の研究から示唆されていることとして、MMAの試合(UFC)における勝敗の77%が、約8~12秒間の高強度動作によって決まるとされています。
こういった高強度動作は無酸素性の運動とされていますが、その一方で、平均試合時間は10分程度とされており、こちらは有酸素性運動です。
つまり、MMA選手には、短時間における無酸素性運動の繰り返しを支える、高い有酸素性能力を発達させることが推奨されています。
ハイレベルのMMA選手には、運動の3平面(矢状面、前額面、水平面)いずれにおいても力を素早く転移させる上肢と下肢の筋力が必要だとされています。特に打撃技にとって重要なものは、水平面における力の転移です。
これに対して、組み技のパフォーマンスに重要な役割を果たすものは、手と前腕などの等尺性筋力とされています。また、MMA選手のパフォーマンスにはスピードもきわめて重要であり、打撃速度の増加は打撃の運動エネルギーを増加させ、対戦相手をノックアウトするパワーの増大につながります。
これに加えて、運動中繰り返しパワーを発揮できる能力や、足さばきの速度、あるいは打撃における大きな力の転移とパワー発揮(特に水平面を介した)を可能にする体幹部の安定性が、MMA選手には求められます。
プレシーズン期、インシーズン期(試合期)、オフシーズン期を特徴とする大多数の競技と異なり、MMAには固定されたシーズンがありません。選手は年に2~3回の大会に出場するのが一般的ですが、出場オファーのタイミングによって、プレシーズンの長さが大きく変動します。ただ、オファーが試合直前にくる場合もあることから、選手は常に準備しておく必要があります。
そのようななかでも、一般的なトレーニングの流れとして、準備期(オフシーズン)においては傷害予防、動的柔軟性、体幹部の安定性、筋力とパワーにおける基礎の構築、有酸素性能力の発達に重点を置いてトレーニングを行います。特定の対戦相手を念頭に置いて実施する試合期(ファイトキャンプ)に向けて、準備期後半では競技特異性を高め、神経筋系への要求と無酸素性コンディショニングの頻度を高めていきます。
そしてファイトキャンプでは、テクニックトレーニングセッションの増加によるトレーニングの負担をより良く管理して、神経筋系への過負荷を最適化していきます。この時期は、MMAに特異的な動作に移行するとともにコンプレックストレーニングが導入され、筋力&パワーベースの運動量を増加させます。
また高強度インターバルトレーニング(HIIT)が代謝系コンディショニングの主な方法となり、有酸素性能力の向上と最大酸素消費量の増加を図ります。

記事では、その他のトレーニングにおける留意点や、速度を基準とするトレーニングを取り入れるにあたっての利用法などにも触れられています。他の競技とは異なるトレーニングプランを構築する必要があるMMAについて、記事を参考にされてみてはいかがでしょうか。
NSCAジャパン2025年翻訳掲載分 Vol.32 No.5 p.64~73
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.45, No.6, 745-753