股関節や腰の痛み、繰り返す着氷の負担…。フィギュア特有のケガを防ぎ、スピンやジャンプの質を支えるトレーニングとは？氷上以外でできる実践をご紹介します。
フィギュアスケートは審美系競技と呼ばれ、その美しさ、そしてステップやスピンなどのスケーティングに関する技術から、氷上でのトレーニングに焦点が当たりがち。しかし、体幹、股関節、および下肢に対する競技特異的なトレーニングエクササイズを実施することによって、ケガの予防およびパフォーマンスの向上が可能であるとされています。
フィギュアスケートの動作には、共通して大腿骨の過外転、過伸展、および外旋が求められます。これにより、股関節唇損傷が起こる可能性があります。また、左右非対称的な着氷動作などにより影響を受ける部位として、腰椎、仙腸関節、および股関節が挙げられています。
これらのケガを予防し、適切な競技動作を実施するには、氷上以外のコンディショニングトレーニングで、体幹の筋力と安定性、下肢の筋力、バランス、そしてパワーを統合したストレングスプログラムを実施するとよいとされています。
トレーニング全体を通して、体幹の筋バランス、筋力、パワー、そして下肢の筋の対称性の向上に焦点を当てます。具体的には、スピンにおいて回転軸を維持し、遠心力の蓄積と変化に対応するためには体幹の筋力が必要です。
また、競技パフォーマンスを向上させ、背部、股関節、体幹部への傷害を予防するには、下肢のアライメントを至適化する必要があるため、殿筋群の筋力に重点を置きます。
体幹の筋力が適切に発達したら、ケガのリスクを低減して、膝関節、股関節、腰部のキネティックチェーン（動作の連鎖）のパフォーマンスを向上させるために、バランス／固有感覚トレーニングを組み込むことが推奨されています。
また、スケート靴を履いているため、身体を支える面が限られています。そのため、絶えず股関節、膝関節、足関節の中外測の筋動員の同期化とバランスが要求されます。
さらに、フィギュアスケート選手は特にジャンプ時に大きなパワーとスピードが要求されます。そのために、プライオメトリックス（ジャンプトレーニング）が推奨されています。
フィギュアスケートのスケジュールには、競技会や氷上でのスキルトレーニング、振り付けや芸術性の要素など、多くの構成要素が含まれていることを考慮しなければなりません。そのためにはトレーニングのピリオダイゼーションも非線形モデルを採用し、他の要素を踏まえてトレーニング量を週ごとに変化させることが推奨されています。
記事では、それぞれのトレーニングの目的に沿った具体的なエクササイズの説明も掲載されています。ぜひ参考にしてみてください。
NSCAジャパン2019年翻訳掲載分 Vol.26 No.1 p.39～45
原文 Strength & Conditioning Journal Vol.39, No.3, 58-65
