• スポーツ・健康
  • 筋肉痛を軽減させるためには?

    誰しもトレーニング後に筋肉痛を経験したことがあると思います。先日、カフェインが筋肉痛の軽減に効果があることを紹介しました(記事はこちら)。今回はカフェインに加え、筋肉痛軽減のための他の方法について紹介します。

    遅発性筋痛とは

    いわゆるトレーニングにおける筋肉痛は、遅発性筋痛(DOMS:Delayed Onset Muscle Soreness)と呼ばれ、普段慣れていない、または強度の高い運動を行った後に数時間から数日かけて発生する筋肉の痛みや不快感のことを指します。とくに伸張性筋収縮による運動後に発生しやすく、筋線維や結合組織の微細な損傷、それに伴う炎症反応などが原因とされています。DOMSは、運動後6〜24時間以内に発生し、おおよそ24〜72時間後で痛みのピークを迎え、5〜7日以内に自然軽減していきます(場合により最大10日続くこともあります)。
    DOMSの重症度は、主にトレーニングの強度が決定因子となりますが、筋活動の種類も影響を及ぼします。等尺性筋活動と伸張性筋活動は、短縮性筋活動と比較して、より強い主観的筋痛を引き起こし、また伸張性は等尺性よりも強い筋痛を引き起こすこと が明らかになっています。さらに伸張性筋活動は、安静時や他の種類の筋活動と比較して、筋力の30~36%の低下(Parr JJ, 2009)、可動域の5~7%の減少(Chatzinikolaou A, 2010)を数日間引き起こしたという研究結果もあります。 

    遅発性筋痛を抑えるためには?

    上記のように、特に伸張性筋収縮が誘発するDOMSによって発生する、可動域や筋力の低下や不快な痛みはなるべく抑えたいところですね。ここでは、DOMSの軽減に効果があるとされる方法について紹介したいと思います。

    ●全身振動刺激(WBV) 
    全身振動刺激(WBV)は、垂直及び水平の機械的振動を用いる神経筋トレーニング法であり、多くのトレーニングジムやスポーツクラブにもこの刺激を用いた機器が設置されています。
    近年、WBVはトレーニング後の筋の回復を早める可能性のある方法として考えられてきました。例えば、伸張性運動(6 回の最大筋収縮を10 セット)の 30 分後に振動刺激(6 分間、65 Hz)を実施したところ、Lau&Nosaka(2011) は対照側の肢に比べて、振動刺激を与えた肢において筋痛(18~30%)が有意に低下することを明らかにしました。
    また、Rheaら(2009)は、普段トレーニングを行なっていない若年成人が伸張性筋収縮によるレジスタンストレーニング及びスプリント(10 回の全力の40 ヤード[約36.5 m]走)の直後にWBVを用いたストレッチング(35 Hzで下肢の90 秒間の静的ストレッチング)を行なった際に、WBVなしで同じストレッチングのみをした被験者に比べて筋痛の有意な低下(視覚的アナログ尺度で22~61%)が運動後72時間まで生じたことを明らかにしています。
    このように、伸張性トレーニング後にWBVを行なうと、DOMSを比較的抑えられることがわかっています。 

    ●アクアエクササイズ
    プールの中で行うウォーキングやジョギング、ジャンプなどのアクアエクササイズもDOMSを軽減する効果があることが分かっています。Takahashiら(2007)は、大学生長距離ランナーに対し、5000mレースの個人ベストタイム(335.7 ± 6.1m · min -1)に相当する速度で、5分間の下り坂走行を3セット行い(セット間休息5分)、その後、水中運動群に対し、プールにて前歩行・後歩行、ジョギング、ジャンプなどをランダムに組み合わせた運動を合計30分間実施しました。水温は29.2±0.8℃に維持されました。結果、この研究によるアクアエクササイズは筋力、筋痛、筋の硬さの回復を促進し、対照群と比較して、全身反応時間の回復を早める傾向があることが示されました。 

    今回は、トレーニング後の筋肉痛を軽減させる方法について紹介しました。
    ぜひ、ご自身に合う方法を試していただき、無理のないようにトレーニングを続けていただければと思います。

    なお、本文中の文献紹介で記載している「Nosaka」とは、7月12日の特別セミナーで講師をいただく野坂和則先生です。このセミナーでは、DOMSを起こしやすい伸張性運動についてお話しいただく予定です。是非、ご参加ください! 

    記事データ

    NSCAジャパンウェブジャーナル2020年翻訳掲載分  
    原文 Journal of Strength and Conditioning Research Vol 26, No10, 2907-2911. 
    NSCAジャパン2022年翻訳掲載分 Vol 29, No, 7,46-57. 
    Strength and Conditioning Journal Vol44, No1, 57-70. 

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