• スポーツ・健康
  • 子どものスプリントスピードはどのように育つのか

    スプリントは、多くのスポーツにおいてパフォーマンスを左右する基礎的な身体能力のひとつです。特に青少年期は、成長や身体の変化が著しい時期であり、最大スプリントスピードの発達にとって重要な時期とされています。そこで今回は、スプリントスピードの発達メカニズムとトレーニング戦略に関する記事をご紹介いたします。

    スプリントスピードの発達は直線的ではない

    青少年のスプリントスピードは、加齢や成長に伴って向上するものの、その変化は必ずしも直線的ではないとされています。思春期直前期(5~9歳)と思春期(12~14歳)にスパートを迎えてパフォーマンスが急激に向上すると考えられています。また暦年齢だけでなく成熟も影響しており、その指標となるのが「PHV(Peak Height Velocity=身長の最大増加速度)」という成長スパートの時期であり、この時期を前後してスピードの変化に個人差が生じ、PHVの8~18ヵ月前にスプリントスピードの最大の向上が生じるという研究がある一方で、PHVの12ヵ月前にスピードの低下がみられるとする研究もあります。こういった点からも、スピードの発達は非直線的な性質があるといえます。

    スプリントスピードを支える3つの観点

    スプリントスピードには、成長に伴う身体の変化が大きく影響するといわれています。形態学的には、脚長の増加がストライド長の拡大に寄与し、これがスピードにプラスの影響を及ぼす一方で、体重の増加はスピードや接地時間にマイナスの影響を及ぼすとされています。
    次に運動学的には、スピードは主にストライド長とストライド頻度で構成されますが、成長に伴いストライド頻度よりもストライド長への依存が強まります。
    そして運動力学的には、特に相対的な筋力とスティフネスが重要であり、短縮性・伸張性パワーの育成が最大スプリントスピードの向上に寄与することが示されています。

    有効なトレーニング戦略

    身体の変化を踏まえた上で、記事では各成長段階のトレーニングに関するガイドラインが紹介されています。

    ・思春期前(PHV前):ジャンプなどのプライオメトリックトレーニングを中心に、神経筋系の適応やスティフネスの向上を目指す
    ・思春期中(PHV中):相対的な筋力と垂直方向のスティフネスの向上を目的に、プライオメトリックトレーニングやレジスタンストレーングに取り組む
    ・思春期後(PHV後):相対的な垂直および水平方向の力とパワーの発揮能力を最大限に増大させるために複合的なトレーニングを用いる 

    まとめ

    最大スプリントスピードの向上には、成長と成熟に対する正しい理解、そして科学的根拠に基づく段階的なトレーニング戦略が重要です。スピードを構成する多面的な因子(筋力、ストライド、神経系の反応など)を理解した上で、子どもの形態に関する変化を定期的にチェックし、成長過程に沿ったトレーニングを行なうことがカギとなるのではないでしょうか。

    記事データ

    NSCAジャパン2019年翻訳掲載分 Vol.26 No.6 p.43~52
    原文 Strength & Conditioning Journal Vol39, No.2, 2-10 

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