
NSCAジャパン機関誌『Strength and Conditioning Journal Japan』2025年11月号を発刊しました。NSCAジャパン会員のみ読むことができる機関誌ですが、毎号数本はどなたでも読めるフリー記事をご用意しています。
●11月号のフリー記事
・タクティカルアスリートのサポート
・レベルアップのためのクールダウン:セット間における手のひらまたは足裏の冷却はレジスタンストレーニングのパフォーマンスを向上させるか?
今回はその中から、「レベルアップのためのクールダウン:セット間における手のひらまたは足裏の冷却はレジスタンストレーニングのパフォーマンスを向上させるか?」をご紹介します。
この記事では、レジスタンストレーニングのセット間に手のひらまたは足裏を冷却することによる、その後のパフォーマンスへ及ぼす影響について紹介されています。
近年、エクササイズにかかわる主働筋から遠位の四肢、(例えば上半身のエクササイズでは手のひら、下半身のエクササイズでは足の裏など)に冷温物質を当てることによるセット間の回復方法について、その効果を調査する研究が行われています。
複数の研究により、レジスタンストレーニングのセット間に、手のひらまたは足の裏を10℃か15℃に冷却すると、トレーニングの総量と筋活動が統計的に増加したことが報告されています。また、セット間における手のひら冷却により、最大筋力の長期的な向上が誘発されたことを示す報告もあります。
これらの効果に対し、冷却によって中枢神経系への刺激が強化されることで、活動中の筋における興奮と運動単位の動員が急激に増加し、その結果、筋力が増大し、疲労するまでにより多くのレップ数を達成できるという理論などが提唱されていますが、実際にはその根底にあるメカニズムは、依然明らかにされていません。
そこで、この記事では、セット間における手のひらや足裏の冷却がレジスタンストレーニングのパフォーマンスの結果に及ぼす影響に関して、先行研究を評価することを目的としています。 

記事を通して、現在ある研究からは、セット間に10 ℃または15 ℃で手のひらや足裏を冷却することで、短期および長期両方において、メカニズムは依然不明ながらも、レジスタンストレーニングの量と最大筋力を増加させる可能性があることを示すエビデンスがみられることがわかります。
トレーニング量の増加およびレジスタンストレーニングによる筋量の増加程度との間には、強い用量-反応関係があると思われることから、セット間における冷却は、このアプローチを目的とすることで、筋の発達を促進する可能性があるでしょう。
一方で、MRI や超音波などのテクノロジーを用いて筋の形態学的変化を直接評価した研究は、これまでなく、さらにセット間の冷却が、一時的なパフォーマンスや筋の活性化を増強しないことを示す研究もあることも事実です。
これらを踏まえると、現状ではセット間の冷却に仮に効果がみられなかったとしても、悪影響を与える報告はないため、実践してみる価値はあるかもしれません。今後のさらなる研究が待たれます。 
●フリー記事1:タクティカルアスリートのサポート
●フリー記事2:レベルアップのためのクールダウン:セット間における手のひらまたは足裏の冷却はレジスタンストレーニングのパフォーマンスを向上させるか?
その他、11月号には以下の記事を掲載しています。
・フォースプレートを用いたジャンプパフォーマンスの即時フィードバックとキューイングがもたらす即時的・縦断的効果−エリート女子テニス選手の一例−
・消防士訓練校で実施されるエクササイズプログラムについての考察
・アスリートのテストとプロファイリング:テストの選択、実施、情報最大化のための指針
・全身性の電気的筋刺激トレーニングが身体組成、筋力、および健康全般にもたらす結果:利点と副作用に関する簡潔なレビュー
・チーム競技中における最も要求の高い時間帯の決定と評価の複雑さ:現在の見解
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