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  • プロバイオティクスはアスリートのパフォーマンスを高めるのか?

    サプリメント

    ヒトの腸には、全身の免疫細胞の約7割が生息していると言われています。昨今では、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)改善のために、「腸活」と称してヨーグルト等の乳酸菌や納豆等を積極的に摂取する方が増えてきました。今回は、女性アスリートのレジスタンストレーニング期間中に、プロバイオティクスのサプリメントを摂取させることで、身体にどのような変化がみられるのか、その一例をご紹介いたします。

    Effects of probiotic (Bacillus subtilis) supplementation during offseason resistance training in female Division I athletes. 
    女性ディビジョン1アスリートにおけるオフシーズンレジスタンストレーニング中のプロバイオティクスのサプリメント摂取の効果 

    Toohey, Jeremy C.1; Townsend, Jeremy R.1; Johnson, Sean B.1; Toy, Ann M.1; Vantrease, William C.1; Bender, David1; Crimi, Chelsea C.1; Stowers, Kathryn L.1; Ruiz, Matthew D.1; VanDusseldorp, Trisha A.2; Feito, Yuri2; Mangine, Gerald T.2
    J Strength Cond Res 34(11): 3173–3181, 2020

    はじめに 

    プロバイオティクス(枯草菌)とは、腸内において身体に有益な効果を与える生きた微生物のことであり、乳酸菌はその代表的な菌の一つと言える。近年ではアスリートに対するプロバイオティクス摂取の効果についての研究も増えてきた。これらの研究では、アスリートに対してある程度の効果が認められているものの(1)、その効果の幅は様々であり、効果を断定することはまだ難しい。

    現在認められているプロバイオティクスの効果としては、負荷の高いトレーニングや競技中の、呼吸器や消化器系の疾患のリスクの減少(1)、抗酸化作用(2)、免疫作用の向上(2、3)等があるが、筋力やパワーの向上に関しては有益な効果はみられなかった(4)というのが現状である。

    今回は、大学生の女性アスリートにプロバイオティクスのサプリメントを摂取させ、身体にどのような効果を及ぼすか検証した。

    目的

    大学生の女性アスリートのオフシーズン中におけるレジスタンストレーニング期間中に、プロバイオティクスのサプリメントを摂取させ、筋力や身体パフォーマンスあるいは体組成にどのような影響を及ぼすかを検証した。

    サプリメント

    被験者

    23名の大学(NCAA)ディビジョン1のバレーボール(n=10)およびサッカー(n=13)の女性アスリート(19.6±1.0歳、67.5±7.4 kg、170.6±6.8 kg)。

    バレーボールとサッカー

    方法

    23名の女性大学アスリートがこの研究に参加し、無作為にプロバイオティクス(n=11、DE111)またはプラセボ(n=12、PL)グループのどちらかに振り分けられた。

    アスリートはオフシーズン中に、週に3~4回の上半身と下半身エクササイズおよび競技特異的なトレーニングからなる、10週間のレジスタンストレーニングプログラムを実施した。アスリートはDE111(DE111;500万/日)またはプラセボのサプリメントを10週間のプログラム全体にわたって毎日摂取した。

    トレーニング期間の前後で、すべてのアスリートが最大挙上重量(1RM)の測定(スクワット、デッドリフト、ベンチプレス)、パフォーマンス測定(垂直跳びおよびプロアジリティ)およびアイソメトリックのミッドサイプル測定を行った。

    体組成(体脂肪率(BF%))をBODPODおよび生体インピーダンス分析、さらに超音波を用いた大腿直筋(RF:Rectus Femoris)と外側広筋の筋厚(MT:Muscle Thickness)によって測定した。すべてのデータの分析に個別の反復測定分散分析を用いた。 

    結果

    10週間のレジスタンストレーニング後、スクワットの1RM、デッドリフトの1RM、ベンチプレスの1RM、垂直跳び、およびRF MT、およびBF%について、時間経過とともに有意な主効果(p < 0.001)が認められた。しかし、プロアジリティ、IMTP PF、IMTP RFD 250 msにおいては、時間経過による主効果は認められなかった。 

    また、これらの内、グループ×時間経過の有意な相互作用がBF%についてみられ(p=0.015)、DE111グループ(-2.05%±1.38%)においてPLグループ(-0.2±1.6%)よりも大きな減少が確認された。これ以外のグループ間の差異は見られなかった。 

    結論・応用

    トレーニング後の栄養摂取と同時にプロバイオティクスを摂取することは、身体パフォーマンスに影響を及ぼすことはなかった。しかし、女性の大学ディビジョン1サッカー選手およびバレーボール選手において、オフシーズンのトレーニング期間後に体組成を改善させるかもしれないことが、これらの研究から示された。

    オリジナルの文献はこちら 

    まとめ

    今回使用されたプロバイオティクスの一種には納豆菌があり、またこの種類のプロバイオティクスはサプリメントとしても摂取することもできます。 

    この研究の結果からはIbrahimらの研究(4)と同様に、筋力やパフォーマンスに対するプロバイオティクスの効果は確認されませんでした。しかし、体脂肪率に関してはグループ間に有意な差が見られ、プロバイオティクスを摂取したグループの方が、体脂肪率の減少に大きく貢献しました。

    一方、ParkとBae(5)らによると、プロバイオティクスの体重と体脂肪率の減量に対する効果は限定的であると述べています。肥満の人を対象にしたBorgeraasら(6)の研究によると、プロバイオティクスを摂取させることで体重や体脂肪率が有意に減少したと報告していますが、効果量は小さかったとしています。今回の研究で示された体脂肪率の減少について、著者らはプロバイオティクスの摂取によって腸内栄養素の吸収率が改善したためではないかと示唆しています。 

    プロバイオティクスに関する研究はまだまだ少なく、運動能力を向上させるような機能は今のところ確認されていません。しかし、免疫作用の向上や、気道や消化器官を整える、さらには抗酸化作用なども認められることから、プロバイオティクスはリカバリーに働きかけることで2次的にパフォーマンス向上をサポートする役割を果たすかもしれません。

    いずれにせよ、プロバイオティクスについてはまだまだ多くの研究が必要な領域といえるでしょう。 

    参考文献

    1. Pyne, D.B., West, N.P., Cox, A.J., and Cripps, A.W. (2015). Probiotics supplementation for athletes – Clinical and physiological effects. European Journal of Sport Science 15, 63–72 
    2. Wosinska, L., Cotter, P.D., O’Sullivan, O., and Guinane, C. (2019). The potential impact of probiotics on the gut microbiome of athletes. Nutrients 11 
    3. West, N.P., Pyne, D.B., Peake, J.M., and Cripps, A.W. (2009). Probiotics, immunity and exercise: A review. Exercise Immunology Review 15, 107–126 
    4. Ibrahim, N.S., Muhamad, A.S., Ooi, F.K., Meor-Osman, J., and Chen, C.K. (2018). The effects of combined probiotic ingestion and circuit training on muscular strength and power and cytokine responses in young males. Applied Physiology, Nutrition and Metabolism 43, 180–186 
    5. Park, S., and Bae, J.H. (2015). Probiotics for weight loss: A systematic review and meta-analysis. Nutrition Research 35, 566–575 
    6. Borgeraas, H., Johnson, L.K., Skattebu, J., Hertel, J.K., and Hjelmesæth, J. (2018). Effects of probiotics on body weight, body mass index, fat mass and fat percentage in subjects with overweight or obesity: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Obesity Reviews 19, 219–232 

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