• スポーツ・健康
  • 遠征時の時差ボケを抑えるには?

    夏本番を迎え、多くの競技がインシーズンとなっている中、より高いレベルでは長時間の移動を伴う海外遠征も行われています。アスリートではない一般の方でも経験したことのある、海外等への長時間移動に伴う、いわゆる時差ボケ。今回紹介する記事では、睡眠障害等を引き起こす遠征時の時差ボケに対する対応策が取り上げられています。

    遠征による時差ボケのメカニズム

    時差ボケは、短期間に複数のタイムゾーン(時間帯)を超える飛行機移動による生理学的機能の一時的変調が、心身のパフォーマンス低下を招く現象です。時差ボケは、睡眠障害、昼間の疲労、集中力の欠如、頭痛、苛立ち、食欲低下などの形で現れます。

    これらの症状のほとんどは、身体に刻まれる概日リズムと外部環境とが同期しないことから発生します。つまり、複数のタイムゾーンを超える飛行機移動後、新たな場所の明暗サイクルに対する睡眠-覚醒サイクルの再同期が遅れると、睡眠障害が生じるとされています。

    時差ボケによる睡眠障害は誰もが経験するものの、その症状の重さと持続時間は、移動するタイムゾーンの数、移動方向、移動中の睡眠などによって異なります。また出発時間と目的地への到着時間も、時差ボケの症状になんらかの影響を及ぼすと考えられています。

    時差ボケによる影響への対策

    遠征に伴って生じる競技パフォーマンスの低下を最小限に留めるには、アスリートとスタッフが総合的な管理を行う必要があります。概日リズムの基本的な反応を共有し、遠征の前、中、後に行うべき行動を確認すべきでしょう。

    例えば、到着時に明るい光(特に自然光)を浴びることは、そのタイミング、強さ、および持続時間によっては、概日リズムの相を前進または後退させる可能性があります。メラトニン(睡眠-覚醒サイクルを調節するホルモン)は明るい光を浴びると分泌が抑制され、暗期に増加します。したがって、概日リズム相を後退または前進させるには、光曝露を調整してメラトニンの分泌を変化させる方法が理想的であるとされています。またメラトニンの分泌を抑制するには、昼間の日光の刺激に似たブルーライトも効果的であることが示されています。

    睡眠障害を緩和する対策としては、東西の移動方向に合わせて、出発の1~2日前に就寝時間を1~2時間調整するなどして、新しいタイムゾーンにある程度適応しておくのが望ましいとされています。また可能であれば、睡眠サイクルへの干渉を減らして遠征による疲労を緩和するために、早朝に出発して午後に到着する計画を立てることが推奨されています。こうすることで、夕刻に出発して早朝に到着する場合よりも次の夜の就寝時間を早めることができます。また移動中の睡眠時間を最大にすることも効果的です。

    さらに、飛行機での移動中には、可能であれば身体を動かす時間を設けて血行を促進することにより、静脈血栓塞栓症、関節硬直、筋痙攣などのリスクを減らすことができるとされています。コンプレッションウェアの装着もまた、長時間移動中に窮屈な姿勢で座っていることに伴う不快さを緩和する効果があるとされています。 

    まとめ

    時差ボケの症状は個々人の様々な条件、たとえば年齢や体力レベルなどによって左右されます。個々人への適切な対策を講じることで、長時間移動後であっても最良のパフォーマンスを引き出せるようにすることが重要です。

    記事では、栄養面における問題や対応策についても紹介されています。遠征前には、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

    記事データ

    NSCAジャパン2021年掲載分 Vol.28 No.2 p.65~70

    関連の記事

    • スポーツ・健康

    アイススラリーで熱中症対策を

    • スポーツ・健康

    動画でトレーニング紹介「バックスクワット」

    • スポーツ・健康

    運動会で速く走るには?まずは「腕」の役割について考える。

    • スポーツ・健康

    アスリートと花粉症 -アンチドーピングに注意!-

    • スポーツ・健康

    シーズン中のトレーニング継続

    • スポーツ・健康

    トレーニングでのセット間の最適な休憩時間とは

    • HPCコラム
    • スポーツ・健康

    連日の冷水浴は割に合わない?バレーボール選手での検証

    • スポーツ・健康

    危険な暑熱下でのレース。有効な熱中症対策は早めの「暑熱順化」

    • スポーツ・健康

    動画でトレーニング紹介「デッドリフト」

    • スポーツ・健康

    ハイキングをより楽しむためのトレーニングプログラム

    • スポーツ・健康

    座りがちなオフィスワーカーの方へ。通勤や仕事中にできる手軽な運動のススメ。

    • スポーツ・健康

    安全で効果的な高地トレーニングをするために

    アーカイブ