一般の方へのトレーニングが身近になってきた今でも、「子どもに筋トレさせていいの?背が伸びないとか言わない?」という声を耳にします。
今回は、なぜこのような迷信が生まれてしまったのか、そしてトレーニングをやっても問題ないという根拠をご紹介します。
まず筋トレ(レジスタンストレーニング)に対する一般の方のイメージとして、
・アスリートがやるもの
・ムキムキマッチョになる
というものが挙げられるでしょう。
特に子どもに対してとなると、
・重りでケガするのでは?
・身体の成長を妨げるのでは?
という心配も加わると思います。
そもそも、レジスタンストレーニングは、適切な管理・監督の下、子ども一人ひとりの成長に合わせた形で行われていれば、身体の成長に悪影響を及ぼすことに対する具体的な根拠はありません。成長に合わせたという意味では、小児期の早い段階から成人期の発達やトレーニングに関してLTAD(Long-Term Athletic Development:長期的なアスリート育成)というモデルがあります。
これは運動の楽しさを保ち、燃え尽き症候群を防ぐことに役立つ、成長に合わせた7段階のステージから構成されたモデルです。この中で、レジスタンストレーニングを含む様々なトレーニングについて、各ステージでどういったことを優先的に行うとよいかが示されています。
例えば、男子6~9歳・女子6~8歳は「ランニング、ジャンプ、キックなどを含む複数のスポーツ、またバランス、コーディネーション、スピードに挑戦するような運動に焦点を当てる」、
男子 9~12歳・女子8~11歳は「腕立て伏せ、自体重スクワット、プルアップ、クランチ、メディスンボールやスタビリティボールを用いた外的負荷運動を行なう」、
それ以降、徐々に重りなど負荷をかけて取り組んでいきます。
このLTADモデルのように、何をいつどのようにやるかを適切に踏まえトレーニングすることで、トレーニングに関する心配事は解消されると思います。
子どもに対してレジスタンストレーニングを実施するメリットは、主に以下が挙げられます。
・運動能力が上がり、競技成績向上に繋がる
・スポーツでのケガをしにくくなり、心臓血管系疾患(心肺機能)に対する耐性もつく
・気分や自己肯定感が上がるなど、心理的な健康と幸福感をもたらす
・大人になってからも運動をすることへの習慣に繋がる
レジスタンストレーニングではバーベルやダンベルを使用することが多いのですが、ダンベルはまだしもバーベルというのは一般の方にとって身近には無いものですので、それらを競技として使用している人たちをテレビで見た時のイメージから、冒頭の迷信が生まれたのではないかと考えられます。
「有名な選手が紹介していたトレーニングを真似すれば、うちの子も上達するかしら?」
という考え方はNGです。プロ(大人)がやっているトレーニングをそのまま取り入れても、効果がないどころかケガを引き起こすこともあります。
繰り返しになりますが、子ども一人ひとりに応じた適切なトレーニングをS&C専門家が計画、監督、管理することが大切となります。もしこれからトレーニング指導者を探そうと思っているならば、その方の資格・トレーニングに関する知識・考え方なども踏まえて検討することをおすすめします。
NSCAは、CSCSおよびNSCA-CPTというトレーニング指導(S&C)専門職資格を認定し、研究に基づいた知識と現場での応用を広く普及する人材を育成しています。
https://nsca-japan.or.jp/certification/exam/
NSCAポジションステイトメント
青少年のレジスタンストレーニング: NSCAポジションステイトメント 最新版
NSCAポジションステイトメント
長期的な運動能力の開発に関する NSCAのポジションステイトメント
機関誌2017年5月号p16-18
子どものパフォーマンスとフィットネス―父母のためのストレングス&コンディショニングに関する情報