夏を迎えるにあたり、プールを利用される方も増えるのではないでしょうか。今回紹介する記事は、水中でのレジスタンストレーニングの効果について、研究論文をまとめたものです。
水中でのレジスタンストレーニングは、高齢者や非活動的な人、泳げない人のための水中での代替トレーニングとして人気があります。その効果・影響について、短期的なもの、長期的なものについて言及されています。
水中環境における身体活動は、浸水の深さに応じて体重が軽減した状態で行なわれるため、心肺機能や筋力を向上させるための効率的かつ安全な代替手段とされています。ある研究では、浸水の深さによる体重の軽減率は、第7頚椎までの浸水で43%減、剣状突起までで29%減、上前腸骨棘までで15%減と報告されています。また水中では、陸上に比べて衝撃力が小さいにもかかわらず、陸上トレーニングと同様の力発揮を示している研究もあり、ケガのリスクを抑えつつ、トレーニングを実施できるとされています。
筋力
水中で行なうレジスタンストレーニング(RT)が筋力向上に及ぼす影響について、性別や年齢問わず効果があることが示されています。またRTが水中エクササイズの一部として実施された場合でも、RT単独で実施された場合でも、その効果は同様です。なお他のエクササイズと併せて実施する場合では、その順序についても言及されています。有酸素性トレーニングと組み合わせることを想定した場合、筋力向上や筋厚の増大効果を最適化するためには、RTは有酸素性トレーニングの前に実施すべきとされています。
身体組成
RTを含む水中エクササイズは、陸上エクササイズと同様の身体組成への影響を示すとされています。単独または有酸素性エクササイズとの組み合わせで行なわれるRTは、体脂肪量、一部の周囲径および皮脂厚を減少させ、さらに除脂肪体重を増加させるとされています。
心血管代謝の危険因子
RTと有酸素性トレーニングを組み合わせた場合、一部の研究において、心血管代謝における危険因子、中性脂肪、総コレステロール、低密度リポタンパク質コレステロール等の有意な改善効果が認められています。ただ一方で、これらの数値の変化が認められなかったという研究もあることから、さらなる研究が必要とされています。
記事では、ホルモンや筋の活動に対する短期的効果や、パワーや日常生活動作、柔軟性に対する長期的な効果についても言及されています。またこれらの研究結果を踏まえて、水中でのRTを実施するにあたっての一般的なガイドラインは以下のように示されています。まだまだ議論の余地があるトレーニング様式ではありますが、水中であるがゆえの有益性なども考慮し、トレーニングのバリエーションのひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
▼水中レジスタンストレーニングの一般的なガイドライン | |
頻度 | 週に2~3回以上 |
継続時間 | 3~12種目を15~45分間で |
エクササイズ種目 | すべて大筋群を鍛える種目 |
セッション内配列 | レジスタンストレーニング後に有酸素性トレーニング |
浸水の深さ | 剣状突起までの深さ |
量 | 8~15レップ×2~5セット。レップ数はトレーニング目的による |
休息時間 | 目標レップ数に合わせて設定 |
動作意識 | 疲労度と個人の筋力レベルに合わせて、最大速度で実施 |
NSCAジャパン2017年翻訳掲載分 Vol.24 No.3 p.44~56
原文 Strength & Conditioning Journal Vol36, No.3, 48-61