
春先は、昼夜の寒暖差による筋肉の硬直や、冬の運動不足による筋力低下等で、腰痛を発症しやすい時期。体幹が強くなると腰痛の防止になるだけでなく、スポーツパフォーマンスの向上にも繋がります。今回は、長期的な体幹のダイナミックまたはアイソメトリックトレーニングのどちらが体幹のスティフネス(剛性)の向上に適しているか、検証したものをご紹介します。
Effect of long-term isometric training on core/torso stiffness.
長期的なアイソメトリックトレーニングがコア/体幹のスティフネスに与える影響
Lee, Benjamin C. Y.; McGill, Stuart M. J Strength Cond Res 29(6): 1515–1526, 2015
体幹のスティフネス(剛性)はスポーツパフォーマンスの特性を向上させることが知られている。しかし、アイソメトリック(等尺性)またはダイナミックコア(体幹)トレーニングの効果に関しては様々な意見があり、論争になっている。
本研究は、長期的なトレーニングによって体幹のスティッフネスは変化するのか、またそうであれば、最も効果的なトレーニング方法は何であるか検証することを目的とした。
24名の健康的な男性被験者(23±3歳、1.8±0.06 m、77.5±10.8 kg)
24名の男性被験者が、6週間のコアトレーニング介入の前後の受動的および能動的なスティフネスの測定に参加した。12名の被験者(22±2歳、1.8±0.08 m、78.3±12.3 kg)は身体およびコアエクササイズに対して未経験者であると判断された。他の12名(24±3歳、1.8±0.05 m、76.8±9.7 kg)はムエタイの選手(経験豊富な)であった。
繰り返しの測定を行う方法で、コアトレーニング方法(アイソメトリックvsダイナミック、コントロール群を伴う)および、被験者のトレーニング経験(未経験vs経験者)を6週間のトレーニング期間の前後で比較した。
受動的なスティフネスは、「摩擦抵抗のない」屈曲の機器を用いて評価し、能動的なスティフネスはクイックリリースの仕組みを通して評価した。
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受動的なスティフネスはアイソメトリックトレーニングのプロトコル後に上昇した。ダイナミックトレーニングの効果は小さく、予期されたように、コントロール群に変化は見られなかった。能動的なスティフネスはどのグループにおいても変化を示さず、被験者間およびトレーニング経験間の比較は相互作用を示さなかった。
本研究によって、アイソメトリックトレーニングは体幹のスティフネスを向上させるためにより優れたエクササイズであることが判明した。体幹スティフネスの向上は過重負荷に対する抵抗を向上させ、痛みを発生させる脊柱の微細な動きを阻止し、そして遠位の四肢のバリスティックな動作を向上させるために重要な意味を持つことがわかった。
これらの結果から、体幹スティフネスの向上は、腰部や膝の怪我の発生件数の低下について説明できるかもしれない。
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今回の研究で使用された体幹トレーニングのプログラムは漸進的で様々なエクササイズが含まれています。例えば、アイソメトリックトレーニングにおいては、プランクやデッドバグなどの初歩的なエクササイズからパロフプレスのバリエーションやスーツケースホールド、そしてウッドチョップやStir the potなど強度の高いエクササイズへ移行しています。
また、ダイナミックエクササイズにおいても、カールアップやスーパーマン、バックエクステンションやバーベルツイスト、さらにはメディシンボールスロー等より強度の高いエクササイズへと漸進しています。
体幹の安定性の向上は、アスリートにとっては、スポーツパフォーマンスの向上につながるだけでなく(2)、下肢の傷害予防(1、2)にも貢献すると報告されています。McGillによると(3)、体幹のスティフネス(剛性)を向上させると、近位が安定することで遠位の力やパワー出力が向上すると述べています。
なお、体幹のダイナミックとアイソメトリックトレーニングを比較した研究はいくつかあり、上肢のパフォーマンス(パンチのバリエーション)(4)やクライミングのパフォーマンス(5)に対する効果を比較しているもの等があります。
これらの研究では体幹のパフォーマンス自体ではなく四肢や動作のパフォーマンスに着目していましたが、どちらの研究でも両方のケースでパフォーマンスが向上したと報告されています。
今回はコアのスティフネスのみに注目し、受動的なスティフネスにおいてはアイソメトリックトレーニングに軍配があがりました。体幹スティフネスの向上によって脊柱でより大きな負荷に対して耐えることが可能になり、また四肢のパフォーマンスの向上にも貢献することがわかりました(4)。
また、LeeとMcGill(6)によれば、体幹のアイソメトリックトレーニングは即時に体幹のスティフネスを向上させることもできると報告しており、高重量でトレーニングを行う前やスポーツ前のウォームアップとして活用してみるのもよいかもしれません。
今回ご紹介したのは、若い男性被験者を対象とした研究でしたが、体幹を強化することは性別や年齢を問わず、多くの方々にとってメリットがあります。体幹を強くすることで正しい姿勢の維持が容易になり、慢性的な腰痛や肩こり等が改善するだけでなく、身体のバランス能力も向上します。
普段から体幹トレーニングをしないという方は、日常生活に取り入れてみてはいかがでしょう。あなたの活動範囲が広がるかもしれません。
1. Willson, J.D., Dougherty, C.P., Ireland, M.L., and Davis, I.M.C. (2005). Core stability and its relationship to lower extremity function and injury. The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 13, 316–325
2. Willardson, J.M. (2007). Core stability training: Applications to sports conditioning programs. Journal of Strength and Conditioning Research 21, 979–985.
3. McGill, S. (2006). Ultimate Back Fitness and Performance, Third Edition. Backfitpro Inc.
4. Lee, B., and McGill, S. (2017). The effect of core training on distal limb performance during ballistic strike manoeuvres. Journal of Sports Sciences 35, 1768–1780
5. Saeterbakken, A.H., Loken, E., Scott, S., Hermans, E., Vereide, V.A., and Andersen, V. (2018). Effects of ten weeks dynamic or isometric core training on climbing performance among highly trained climbers. PLoS ONE 13
6. Lee, B., and McGill, S. (2017). The effect of short-term isometric training on core/torso stiffness. Journal of Sports Sciences 35, 1724–1733